再誕するように

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再誕するように

 長い、長い、寒冷期。あるいは悪夢。  傷つき苦しみ、それでも守りぬこうとした思い。  泣いて叫んで、それでも胸に抱きしめ続けた思い。  しかし幼き心身が負うにはあまりにも深い傷は、心を凍らせ完全に閉ざし切らねばその思いを守れぬ程のもの。  侵され、喪失し、希望が絶望となるように。だからこそ、全てを閉ざした。  残ったものは強さへの渇望、生きる為にと、傷を埋めるようにと苛烈に求めて剣をとった。  本来の意味を忘れていても、彼女の無意識には閉ざしたものが生きていたのかもしれない。  そしてようやく、凍りついた心に気づく者が現れた。  少しずつ、少しずつ、忘れてたものを思い出す。  少しずつ、少しずつ、忘れてたものが牙を剥く。  戸惑い、迷い、苦しみ、傷ついて、剣を通して心の嘆きを届けようとした。  やがて自分の答えが見えた時に、彼女は自分を許せなかった。自分自身を、そして、怨嗟の闇の中でようやくたどり着いた記憶。  誰かを守る為に強くなりたい。  虐げられるものを救う為に、弱いものを守る為に。自分自身が苦痛という絶望を刻み込まれた時に、最初に芽生えた思い。  歌姫ルリエは取り戻す、己が求めた強さの意味を。そして、もう二度と忘れぬと剣に誓い旅を続ける。  
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