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「こんばんは、まさきです」
「こ…こんばんは…」
いや…にしても…
そのコート…
大学で同じようなロングコートを着た男子学生がいたが、その人は陰で女の子にマトリックスみたい、と笑われていたのを思い出した
それ以外でも…
反射するカマキリの目みたいなデザインのサングラスに、時代遅れの細眉…しかもよく見ると、アイブロウで描かれていて眉毛だけ異様に浮いているし…
さすがにヤバすぎる格好だろ…
いや、格好と言うか雰囲気というのかな…
とにかくすごく独特な雰囲気
サングラスとか細眉とか怖いし変な見た目だし、もう帰りたい!
「っあの、「お腹空きましたね、何か一緒に食べましょうか」」
「え、あ、あの…」
「そこのハンバーガー屋でもいいですか?」
「え、あ、まあ、はあ…」
いや断らんかい、自分!
彼の見た目の迫力に負け、そのまま私達はハンバーガー屋に入った
食事…食事をしたらすぐ帰ろう!
「どうぞ」
彼はすごく自然に、扉を先に開け、私を通してくれる
「どうぞ」
そしてすごく自然に椅子を引いて、私を席に座るように促す
あれ…なんか…
女の人に…と言うか、人に自然に気遣いできる人なんだな…
そこで話した会話の内容は主に仕事の話だったが
元々バーテンダーをしていて、六本木に自分の店を持っていた事
その後その仕事を活かして、今は飲食業をプロデュースする仕事を自分でやっている事
後々彼と関わっていくうちにその仕事内容がわかってきて…
彼のしている仕事というのは、売り上げを伸ばしたい、立て直したい色々な飲食店経営者のお店で、会社のマネージャー的な立ち位置で、期間限定的に働くと言うスタイルだった
働いている内容は、側から見ている限りは、そこの従業員と同じことをしていたので、会社経営をしていると言っても従業員を雇って…と言う感じではなかった
私的には会社経営と言うと、従業員を雇って自分は裏方で…と言うイメージだったので、会社経営と言ってもピンキリなんだ
けどその頃はそんな話を聞いて
学生で、アルバイトしかしたことなく、周りは学生しかいない狭い環境しか知らなかった私にとっては、単純に
凄いなあ…
見た目の割に、しっかりしてるんだな…
と思ったのは覚えている
その後、食べ終わったトレーや紙くずも、自然に私の分も片付けてくれた
「どうしました?」
はっ…
「いえ、別に…」
私は席を立って、出口に向かう
そこでも彼はまた、自然に扉を開けて、私を先に出してくれた
なんか思ってたより、いい人かも…
人は見た目じゃないんだな…
こんな人が一緒に居てくれたら…
「何処か飲みに行きますか?」
「…はい」
単純か
今は、素直に「はい」と言って、彼と飲みに行きたいと思った
そこから私鉄にまた乗って、池袋で降りた
池袋は、さっきいた駅と比べ物にならないほどさらに都会だ
駅前の人ごみを抜け、人が疎らになった頃
一件のお店に辿り着く
階段を登っていくと、広いフロアにテーブルがいくつかあり、壁面にはダーツが何台か設置されていた
「いらっしゃい、あ、まさきくん久し振りじゃない!」
そこのお店の店主と彼は知り合いらしく、挨拶を交わしていた
私と彼はアルコールを頼み、それを一緒に飲みながらダーツを楽しんだ
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