love is blind

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帰り道、駅に向かう途中で彼が突然手のひらを見せて来た 私は意味が分からず、彼を見る すると彼は私の右手を取り、そして恋人繋ぎをしてきた びっくりしてまた彼を見ると、彼は無言で微笑んで、そのまま一緒にまた駅まで歩みを進めた あんなに怖くて、ヤバイやつだと思った初対面 今は、そんな印象も何処かへ消えていた 見た目は変な雰囲気の人だけど、悪い人じゃない 年末の忙しない街並み 東京のキラキラした景色は、私の瞳に明るい未来を映してくれているみたいだった 年明け 私はそんな彼とまた会った 都内で待ち合わせをして、私達はタクシーに乗って麻布十番まで出た そこにある、とあるバーに入る 「おー、林(はやし)くん!いらっしゃい」 林くんと言うのは、彼の苗字 因みに"まさき"と言うのは水商売をしていた時の源氏名らしく、携帯ゲームなどで、名前登録の必要がある時に付けている、と言っていた そこのバーのマスターは、丸眼鏡に口ひげを生やし、ロマンスグレーの髪色をした、紳士みたいな見た目だった 本当に、バーの店主と言う感じの見た目 このオーセンティックバーの雰囲気に合っている 彼はここのお店の人とも顔なじみのようだった 「あら随分可愛い彼女だねえ~」 物腰の柔らかい物言い 私はその人の優しい喋り方もあって 「彼女だなんて…まだそんなあ~…」 と、にやにやと気持ち悪い笑顔をさせて言った 「幾つなの?」 「二十一歳です!」 私はまた笑顔で答えた 「へ~! じゃあ林くんと十四歳差だね」 え… 十四歳…差…? 確か、ケータイゲームの時は二十七歳とかって言ってなかったっけ…? って事は… 本当は…三十五歳って事…? 「そう言えば林くん、お子さんは元気?」 「はい」 …えっ!? お、お子さん…!? …もしかして…既婚者って事…!? そ、そんな… 知らなかった… 危ない… 私、結婚してる人を好きになるところだった… 「林さんって既婚者だったんですねえ~…知らなかった」 そう言いながら、ははは、と引きつった笑顔になってしまった 「いや、してた」 そう言って左手を見せて来た …え じゃあ バツイチって事…!? 私は色々な新事実に頭が付いて来なくなった ど、どう言う事… 「…なんで年齢嘘ついたんですか…?」 そして辛うじて、ふと疑問に思った事を口に出した 「年齢なんて、単なる記号でしかないから」 記号… 「あ…そう…ですか…」 その時の私は、彼がなんで年齢を詐称したのか意味がわからなかったが、歳を重ねていくうちに彼が何故そんな事を言ったのか なんとなくわかるような気がした
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