love is blind

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それからかなり長い時間そのお店で過ごして、マスターも含め二人とも結構酔っているようだった 私は最初のシャンパンを飲んで、その後何か甘いお酒を飲んだ気がする けど、私は二人のように酔ってはいない 何故かその後、お店のビルの屋上に行くことになり、私達三人は屋上へ向かった 乾いた風に、晴れ渡った雲一つない真っ青な空 もう完全に朝だ ここに来た時は夜だったのに… 東京のビル群が、目の前に広がっている 横を向くと六本木ヒルズのビルが見えた 「飲もうか!」 と彼が言うので、マスターは、下のバーから好きなお酒取ってきていいよ、と彼に言っていた 彼は飲物を取りに階段を降りて行く バーのマスターと二人きり 気まずいな…なんて思っていると 突然そのマスターが近づいてきて、ハグをしてきた …え!? 私はびっくりして身構え、こんな場面を彼に見られたらどうしよう、と戸惑って抵抗をしたが、思いのほかマスターの力は強い 「あの、ちょっと…」 私は笑顔を引きつらせながら、抵抗をすると 「本当に林くんが好きなの?」 と聞いてきた え… 「いや…まあ…」 突然そんな事を聞くので、私は抵抗する事を忘れて彼の事を考えた 「本当に? 本当に好きなの?」 その彼は執拗に聞いてくる 本当に…ってどういう意味…? 「…はい」 「そう…」 別に、マスターが私の事が気になるとか、気に入ったとかではないと思う 酔って抱き着いてはきたが、そんな雰囲気はなかった なのに、なんでそんな事を執拗に聞くんだろう… 何となくだけど マスターのその物言い的に、何か別の意味があるような気が微かにした 何て言うのは後付けだけど この時、本当に好きなのかとマスターが問うた真意を、意味を聞いていれば… 今とは違った未来があったのかな…なんて考えてしまう でも、あの時の私はそこまで頭が回らなかった 酒に酔っていたからとかじゃなくて、今思えば盲目だったんだな… それから私と彼はお店を後にし、初詣をしに、東京大神宮へ出かけた 東京大神宮は恋愛の神様で有名だ 裏道にひっそり佇んでいる神社だったが、それでも神社の外まで人が列を作っている 私達もそれに倣い並んだ 一月の外気温が身体に堪える やっと境内に入り、初詣を済ませおみくじを引いた 恋御籤みたいなやつにする 年齢詐欺 バツイチ 子持ち どんなことがあろうと、私達はやっていける…! そんな念を込めて、くじを引いた ”今の恋、叶い難し” お御籤に書かれていた文字 「まあ俺とは付き合わない方がいいかもねー」 「お前が言うな!」 私は思わず突っ込む 「でも俺なら 神様より自分の気持ちを信じるけどね」 ハッとする 今思えば どうしょうもないスペックなのに、彼に惹かれたのは そんな自信家な所とか… 自分にない部分だった それに、もうこの頃には、そんなしょうもないスペックでも 彼を好きになっていた自分がいたから その後、私は彼と付き合う事になった この時 神様の方を信じていればよかったと、後悔する事になるとは知らず…
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