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2人は子供の頃と同じような掛け合いをしていく。
「お前と話しとると昔の頃を思い出すなぁ、よう幽霊退治したあの頃……って、虹雨?」
由貴の横にはいつのまにか虹雨がいない。ふとさっきから寒気がする右腕の方を触ると鳥肌が立つほど冷えている。真後ろにチルドコーナーがあるからなのか?
いや違う、と由貴は現実逃避してるのではと右を向く。
「……まさか……ってうわああああああっ!!!」
さっきまでレジに座っていた店員らしき人が由貴の横で立っていて、顔が真っ青で尚且つ首が横に折れている。すかさず由貴に向かって襲いかかってきたのだ。
「うわあああああっ、僕は何もしてない! 何も!!!」
腰が抜けてカゴごと床に落として商品が散らばる。
由貴は昔から幽霊はみえはするが、ビビリで良く泣いていた。
「虹雨ーっ!! どこいったん! たすけてくれやあ!!!」
ガチャっ
と音がした。さっきまでいなかった虹雨が持っていたスマートフォンをどこからか出した長い三脚を取り出して組み立て置いた。
「さすが、由貴。ええリアクションありがとう。あとは俺がなんとかする……」
冷静沈着な虹雨が由貴の目の前に立つ。
「まさか僕の驚いてたところ撮影してたんか!!!」
「その通り! 普通の素人じゃ取れんリアクション」
「ひどっ。でもヤバいよ、だんだん大きくなってる!」
店員の折れた首からまた人の首が出てきた。女性くらいの大きさが男性の体に変化してさらに大きくなる。
「え、これなんや……」
「虹雨、なんとかするんじゃないのか? ほら、昔みたいに……それにあの動画みたいに幽霊に説教して……」
「ヤバい、これは逃げろ」
「は?」
「これはダメなやつだ、撤収!」
「だめなやつって? 置いてくな!! 僕はみえるだけなんや! 知っとるやろー」
だだだんんんん!
店自体が揺れる。警報が鳴らないから地震ではない……。
「ドア開かん!」
「嘘だろ! おい、誰か開けてくれ!」
「こんな人通りの少ないところ、だれがたすけてくれる!? てか由貴がここ入ったんだろ?! もっと有名なチェーン店のコンビニ入ればっ!」
「お前が俺の能力使って面白半分でくっだらねぇ動画をふざけて撮影したからこの幽霊は暴れとるんやろが! そもそもあのビルも面白半分で入ったんやろ!」
「あん? お前を助けたのは誰だと思ってるんや? 俺が動画撮ろうとしてなかったらお前はあの暗い通りで中途半端な高さから飛び降りたのに死ぬことできずに苦しみながらのたれ死んでたんだぞ!」
「るせぇ!! 俺がこうなったのはな、解雇した会社の責任であって……」
「……ておい、なんかさらに大きくなってないか」
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