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「夕方から雨が降るって天気予報で言っていたわ。降られる前に帰ってきた方がいいわよ」
レオの首元に赤いマフラーを巻き付け、自分も厚手のダウンジャケットを羽織る。背後から聞こえてきたクリスティーナの一言に私は頷く。マフラーが巻かれ、外に出る準備が整ったレオは玄関を飛び出していく。──レオ! 走らない! 車! と叫べばこちらに振り向き口を尖らせるレオ。私は彼を睨み付ける。自分がどれだけ愛されているのかまだ知らない年齢だ、仕方がない。はぁ、小さく溜め息を吐く。
「パーティーのときに雨が降ってくれているといいね」
「まあ。有難いは有難いわ」
警備が薄くなる屋外。雨が降っていれば対象者は傘をさすだろう。どれだけ腕の立つ狙撃手も対象者が傘で隠れてしまっては命中率はぐんと下がる。パパを護るのにはもってこいの天候だ。
私はダウンコートの下に携帯型ナイフと拳銃H&K USPを忍ばせる。ハンドガンはこいつを愛用して長い。履いたムートンブーツの中にリロードするのに必要な弾倉を入れるのも忘れない。
喧嘩をしながらもレオの宿題をイーサンが一通りみた後、レオの提案でモノポリーに興じた。散々遊んで騒げば、クリスティーナにパーティーの準備の邪魔だと邪険に言われ、外出することにした。
「気をつけて行ってらっしゃい」
「ありがとう。後、よろしく」
私は外で待っているイーサンとレオのところにゆっくりと歩いて行く。目的地は移動遊園地。
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