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ネコとばぁちゃん
「にゃあぁああ」
暖かい日のあたりのいい縁側で、茶色のブサイクな三毛猫が大きなあくびをした。
ブサイクな三毛猫の背中を、シワシワな手が触る。
ブサイクな三毛猫は、その手が好きだった。
優しくて温かい手のぬくもり。シワシワな手が背中を優しく撫でる。
ブサイクな三毛猫は気持ち良さげに、彼女の膝の上で丸くなる。
ぽかぽかと春の日差しが暖かい。そのまま眠りそうになり、うとりうとりとまぶたが重くなっていく。
すると、ドタドタとした音で眠気が遠のいた。ブサイクな顔をさらにブサイクにし、音のした方へ顔を向ける。
大好きな彼女も音の方へ顔を向けていた。
ドタドタ音の主がやって来た。彼女より若い女のヒトだ。
女のヒトは、彼女へ何かを言っていた。彼女も女のヒトへ静かに何かを言う。
だけど、余計に女のヒトのカンにさわったのか、女のヒトは彼女の細い腕を引っ張った。
ブサイクな三毛猫は、毛を逆撫でて女のヒトへ威嚇する。女のヒトは、ブサイクな三毛猫を睨みつけた。
ブサイクな三毛猫は、女のヒトのおぞましさに怖気つき、彼女の背中へ隠れてしまった。
女のヒトは彼女を立たせ、どこかへ連れて行こうとしていた。ブサイクな三毛猫は、ノタノタと後を追いかける。しかし、彼女が首を振った。
ブサイクな三毛猫はその意図が分からず、後を追う。
女のヒトは彼女へ何かを言うと、ブサイクな三毛猫のところへ来て、ブサイクな三毛猫の体を持ち上げて反対側を向かせた。
ブサイクな三毛猫は、向きを変え、二人の後を追いかける。
「みーちゃん」
ブサイクな三毛猫の足が止まった。『みーちゃん』。ブサイクな三毛猫の名前だ。
その名前を呼んだのは、彼女だった。
「みーちゃんーー」
彼女はブサイクな三毛猫の名前を呼びながら、何かを言っている。だが、ブサイクな三毛猫は『みーちゃん』以外の言葉を知らない。だから、彼女が何を伝えたいのか分からなかった。
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