火遊びの概念が覆される

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「どれも美味いよ」  徳山さんは、いかにも手作りというような形の唐揚げやおにぎりを頬張って笑った。  その顔はちょっと子供みたいで可愛い。  サキさんがよく言っていた、母性本能をくすぐるという意味がやっと理解できた気がした。  胸の中がくすぐったくて、今にも抱き締めたい衝動に駆られる。 「こんなに豪華なの、作るの大変だったでしょ」 「別に、残り物詰めただけなんで!」  嘘つけ。野菜の肉巻きとか、生まれて初めて作ったくせに。 「ありがとう。綾ちゃん、料理上手なんだ」 「い、いえ……」  そんな恍惚な目で見つめられると、またどうしていいかわからない。 「毎日でも食べたいな」  じっと絡めとるような視線に囚われて、身体が動かない。  毎日?そんな、喜んで。  それって、奥さん候補に昇格ってこと?  いやいや、自惚れすぎだな。  きっと徳山さんくらい素敵な人だったら、他にも美味しい料理を作ってくれる女性がたくさんいるはずだ。  だって私は、遊び相手だし。 「じゃあ、一緒に住みます?」  そんな冗談を言ってこなれた女を装って、バカみたいだ。 「本当に?」  勢いよく前のめりになる彼に驚いた。 「場所とか希望ある?戸建てとマンションどっちがいい?」  あまりの真剣さに面食らって、このあとの返しが思いつかない。  これって、どこからどこまでが遊びの会話なの? 「冗談ですよ」 「……なんだ、冗談か」  明らかに肩を落とす彼が面白くて、お腹を抱えて笑った。  徳山さん、結構芸が細かい。
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