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連絡を取ると、あっさり会ってくれた。
やはり、俺を忘れられないのだろう。
ヨリを戻そうと言えば、同意してくれるはず。
はやる気持ちを抑えて、待ち合わせの喫茶店に行った。
案内された席に座っていると、妻が入店してきた。久しぶりに会う妻は、匂い立つ様な色香を漂わせて周りを圧倒していた。
俺はあくまで愛想良くし、どうやって復縁を切り出そうかと考えていた。
妻は相変わらず美しいが、若干痩せていた。
ついに復縁を切り出そうとした時、妻は冷たい目で俺を見つめて言ってきた。
「小太郎の事は忘れてよ。世話はちゃんとしているから。
それと今後はもう、会わない。
それじゃ、元気でね。」
俺は急いで後ろから声を掛けるが、妻は振り向きもせず立ち去ってしまった。
妻はもう、前に進もうとしていたのだ。
恐らく事情を説明したところで、復縁には同意をしてくれないだろう。
この時にようやく、失った物の大きさに気づいた。
小太郎に怒られた時に妻に謝罪をしていたら、結果は違ったのかもしれない。
あの時の小太郎は「近づくんじゃねぇ」じゃなく、「もう、やめておけ」と叱ったのかもしれない。
FIN
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