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数ヶ月過ぎて元主人から連絡がきて、2人で彼の会社近くで会う事になった。
小太郎の事で話しがしたいと言われて、渋々会いに待ち合わせの喫茶店に行った。
向かいに座る元主人がコーヒーを一口飲むと、私に聞いてきた。
「小太郎はどう?」
「元気よ。最近はお気に入りの場所で寝てる。」
「そうか。最近の写真とかないのか?」
「小太郎の?無いわよ。」
「相変わらず、お前はクールだね。
それにしても小太郎には悪い事をしたな。」
「猫には優しいのね。」
「小太郎を保護したのは俺だから。」
彼は目を細めて優しい顔をして微笑んだ。
こんな優しく微笑む顔を見たのは、いつぶりだろう。
私は幸せそうな彼を見つめて、思わず聞いてしまった。
「そっちはどうなの?」
私は質問した後に後悔をした。
彼は破顔しながら、私に言ってきた。
「元気だよ。」
「そう…」
「あのさ…」
私は胸に込み上げるジリジリとした思いに、堪らず話しを切り上げた。
「小太郎の事は忘れてよ。世話はちゃんとしているから。
それと今後はもう、会わない。
それじゃ、元気でね。」
私が立ち上がると、彼は何か言っていたが構わず立ち去った。
今にも泣き出しそうな自分を奮い立たせて、帰路についた。
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