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家に帰るとすぐに、ベッドにダイブした。
涙を流すものかと考えれば考えるほど、涙が止まらない。
私ばかりが裏切りにあい、子宝に恵まれず、これから先の人生を過ごさねばならないのか。
人を不幸にした奴が何故、幸せになっているの。
私が嗚咽が漏れるほど泣いていると、顔の横に丸い黒い塊がやってきた。
見上げると小太郎が、私の顔に擦り寄ってきた。
初めての事に驚いた。
私には甘える事の無い小太郎の行動に、驚きつつも更に涙が出てくる。
私はおもむろにベッドに座ると、小太郎を抱きしめた。
「小太郎、ありがとう」
涙でぐちゃぐちゃになった顔を近づけて言うと、小太郎は迷惑そうに鳴いた。
翌日、小太郎との関係が劇的に変化した訳ではなかった。
それでも私を慰めてくれた事が嬉しくて、仕事終わりにペットショップに寄り小太郎が喜びそうな玩具を買って帰った。
それから、小太郎は私が帰るとたまに出迎えてくれるようなってきて、私は抱き上げて頬擦りする。
すると小太郎は、スルッと腕の中からすり抜けて迷惑そうにしている。
たまには立ち止まって泣くのもいいよね。
暫くは人間の男にはウンザリだけど。
「小太郎が私の恋人だもんね。」
どっしりとした丸いフォルムを優しく撫でた。
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