21人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、小太郎の機嫌を取ろうと早めに帰宅した。
玄関先まで小太郎が出迎えてくれた。
ホッとしていると、小太郎は俺の匂いを嗅いできた。
今日は彼女と会ってないのに、ドキリとした。
妻が小太郎と俺を見て言った。
「お帰りなさい。私も今帰って来たばかりだから、夕飯はまだなの。
それにしても、小太郎はあなたが大好きなのね。」
いや、違う。
小太郎は君を守っているんだよ。
君が傷つかないように。
その日以降、頻繁に彼女と会うようになった。ホテルで過ごす彼女との時間は俺には有益で、全てから解き放されていくようだった。
そんな時に彼女から妊娠をしたみたいだと告げられた。
「えっ?だって、ゴムしてたから俺じゃない。」
「ゴムしていても妊娠する可能性は、ゼロじゃないのは知っているでしょう?」
「そうだけど、でも…」
「責任、取ってくれないつもり?」
俺はいつからか、深みにハマっていたらしい。
責任という言葉が今更ながら、重くて果たさなければならない事だと気づいた。
「わかった。妻に話すまで待ってくれ。」
「もちろんよ。奥様には申し訳ない事をしたわ。」
彼女がそう言ってお腹をさすった。
自分の子供が出来た事に少しの喜びも実感も無かった。
最初のコメントを投稿しよう!