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漂流する虚空に導かれて
真下を見降ろす
眼下を見やると、魂魄色の様な、大海が視えた。
その下に落下する、小さな小さな、小粒の様な、近代異物らしきモノ。
ハテ?
亞
そう云うまもなく、海に落とされてしまった。
自然環境破壊とか、そんな慈善に関心はない。
寧ろ、海岸、砂浜を歩けば、漂着物が、そう云うモノばかり、釜山や、台湾から、幾つも、波に漂って、塵の山だ。
幾ら、拾っても、拾っても、また、明日になれば、無尽蔵に、散乱していた。
そんな、キリのない、いつまで続くのか、そう云う事をする事に、何ら悦びもせず、満たされない白い砂浜で、悪天候の雲行きを怪しんでいた、殺伐とした海。
私を引き摺り込む、海の霊達。
波に脚を奪われて、海難事故死して、発見される遺体。
一度、そう云う救難被害の海で、騒いでいる人々を尻目に、去ろうとした事があった。
子供が私に、人が海に!!!!!!!!と叫んで居たが、僕は知らない。そう言い、逃げたのだった。
自分の過去の罪に囚われていた僕は、その頃、防波堤に、寝そべり、ソラを見上げて、家に帰れずに、時間を潰していた。
孤児にした、いたいけな幼子に、弱いモノいじめ、折檻した。
自分も、外で、暴力に遭っていた。
精神は、破綻していた。
その過去が、私にあるから、私は、成人した兄弟に対して、意固地になり、卑屈になる一方だった。
私は自分自身を赦せなかった。
罪を背負いし我。
夢を見た。
海難事故で亡くなった青白く光り輝く御霊が、私に自分を責めないで、と慰めてくれた、摩訶不思議な夢だった。
眼を醒ますと、私の瞳から、訳もなく涙が頬を伝い、流れ落ちていた。
本が山の様に、うず高く積み上げられ、その真上で、居眠りをしていた、無法者の我は、哀しくも祖母の故郷へ、本当は今日行くはずだったのをすっぽかした事を、親に詫びた。
アレが神秘体験というモノなのか分からないが、救われていたのだろう。
夜の街を徘徊すると、現実を忘れさせてくれる薬の売人を探した。
だが、そんな影は、ついぞ現れなかった。
居たのは、夢物語を弾き語る、吟遊詩人達のみだった。
街並みに立ち尽くしていると、そう云う彼らの語り部達に、少しだけ、聴き耳を立てて、気づけば、其れに心が打ち震えている。
そんな、微かな希望。
気づくと、自然と私の心が、温かく充たされている。
心地良い、肌に触れる、さざなみが、僅かな、新緑の季節に、温もりとなって、こそばゆい程、僅かな、撫でる様な優しい風が、私の頬を、なぞっている。
いつも、愛している。
そう、私に語りかける。
忘れてはいけないモノ
決して、失ってはならない宝物の様な、大切な想い出達。
私は、信じたモノを失う訳には行かなかった。
僕の願いー其れを諦める事は絶対に、出来ない。
棄て去る事は、不可避だったんだ。
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