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黒装束
然るのちに、巷に溢れる有象無象の異国異物の類の呪物が実在する事が判明した。
冴芝国時は、この時の為に今迄、永い沈黙期間の内に居た。
なにしろ、無くしもの。無くしてしまっては元も子もない。
そんなことより、私は全く違う別の事を考えていた。
漫才のネタ合わせである。
呑気な奴よの?
と、空を翳して、彼はおどろおどろしい禍々しい災いが降って湧いて出る。
一振り、手を下ろせば、下卑た嗤いの、架空の幻を魅せる手品を使う。
それは人々を笑わせたと言う異伝が遺されている。
然し、そんな世迷いごとも、永くは続かぬ。
冴芝国時は、遂に自身の鍛刀を、ひけらかす日が来たのを待ちに待っていたとばかりに、振り下ろした。
大地が時空の裂け目を切り裂き、地面がひびわれ、街は洪水に呑まれ、人々の絶叫がこだました。
人々は唖然とする。
な、何をしておるのだ?
な、なぜ??!民間人に?!!
罪なきものを!!!
この、血迷ったか?外道?!!!!!
それについては、彼は涼しい眼をして、冷めきっていた。
ふんぞりかえると、潮が引いた跡に、大量の屍体が、のそのそと、蠢いている。
それに対しても、彼は整然とした、眼差しで見つめ、そして、拡声器を持ち、大声で張り裂けんだ。
"滅"
全てが地面に沈み、地下に戻り、地殻に、屍体が、溶け込んでいく。
大地の裂け目に浸り込んで逝く、亡骸は、養分になり、大地に芽を咲かす。
土を掘り起こすと、花が咲く。
そう、爺がいつか、言うてた。
畑を耕す時に、変わった事を言うな?と思うた。
その時に湧き出たのは、蟻の群れじゃ。
だが、土が生きているなと感じた。
処がどうじゃ、今日鎌で草刈りをしていたら、植えた植物が滅しておった。
悲しい話じゃ。
静まり返り、湖畔の彼方で、彼は、肘掛け椅子に、落ち込み、ギシリと言う音と共に深い眠りに就いた。
この世界には華がない。
街に炙れたヤブ共、根絶やしにしよう。
この世界に
お花畑を作るのさ。
"天上天下唯我独尊"
そう、彼は唱えた。
世界がまざまざと様変わる。
この天地もひっくり返る事変が起きたのである。
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