はじまりの出会い

10/13
前へ
/51ページ
次へ
「アスト様! あっちの黒いのは?」  もう一つの、明るい声。  声のした、道の入り口の方を見ると、黒いローブとフードを被った人と、黄色いツインテールの、こちらもピンクと黄色のオッドアイの目をした少女。   「シリン、様呼びはやめろと……」 「そんなことより、大丈夫なの? あの人まだ動けるみたいだけど」  シリンと呼ばれたその少女は指を指す。  その指先は、少し離れたところでルビーと同じ状況になって倒れている男を指していた。  男は壁を伝いながらなんとか立ち上がり、ローブと少女を睨んでいる。  その身体から、静電気を何倍にも大きくしたかのような音が鳴っている。 「てんめぇ……!」 「シリンの電気を受けたにしてはよく動くじゃないか。面白いな」  ルビーは呆然とその様子を見つめていた。   「なに……あれ……」 「お姉ちゃんが使ったのは、『宝石の力』って呼ばれるのだよ」  ルビーが無意識に零した問いに、すぐ側のとるるが答えた。 「アスト様の力は誰よりもすごいんだよ!だって……」  突然嬉々として話に割り込んできたシリン。その頬をナイフが掠める。  カラン、と音を立ててナイフが落ちた。  束の間静まり返ったその場。 「……お兄さん、名前は?」    シリンは男を振り返る。  屈託のないようにみえる笑みを浮かべて。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加