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「アスト様! あっちの黒いのは?」
もう一つの、明るい声。
声のした、道の入り口の方を見ると、黒いローブとフードを被った人と、黄色いツインテールの、こちらもピンクと黄色のオッドアイの目をした少女。
「シリン、様呼びはやめろと……」
「そんなことより、大丈夫なの? あの人まだ動けるみたいだけど」
シリンと呼ばれたその少女は指を指す。
その指先は、少し離れたところでルビーと同じ状況になって倒れている男を指していた。
男は壁を伝いながらなんとか立ち上がり、ローブと少女を睨んでいる。
その身体から、静電気を何倍にも大きくしたかのような音が鳴っている。
「てんめぇ……!」
「シリンの電気を受けたにしてはよく動くじゃないか。面白いな」
ルビーは呆然とその様子を見つめていた。
「なに……あれ……」
「お姉ちゃんが使ったのは、『宝石の力』って呼ばれるのだよ」
ルビーが無意識に零した問いに、すぐ側のとるるが答えた。
「アスト様の力は誰よりもすごいんだよ!だって……」
突然嬉々として話に割り込んできたシリン。その頬をナイフが掠める。
カラン、と音を立ててナイフが落ちた。
束の間静まり返ったその場。
「……お兄さん、名前は?」
シリンは男を振り返る。
屈託のないようにみえる笑みを浮かべて。
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