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えー、と、まるで子供のようにアストは口を尖らせる。(顔はフードに隠れて本当に尖らせているのかは分からないが)
ルビーはとるあに腕を引かれ、立ち上がる。
「お姉ちゃんとアストさんなら、大丈夫。とるたちは逃げるよ」
震えたルビーの腕を落ち着かせるように、とるるはその腕をしっかりと握る。
だが、ルビーはただ逃げることができなかった。
ちらっと背後を見て、黒いモヤの中で何かがきらりと光るのを見る。
「っ! 避けてっ!!」
それがなんなのか、どこに向けられているのか気付いたルビーは、とるるの腕を振り解きアストに使って突進した。
「っ⁉︎」
アストの背中に体ごと突っ込む。
刹那、背中に焼き付けるような痛みが走った。
鼓動をするたびに、痛みが増す。
「バカなことを……!」
なぜか受け止めたアストの、フードの奥に見える紫の瞳。
ルビーはそれに向けて笑いかけた。
声が出せない。
背中を伝う生ぬるい感触と、呼吸のできない苦しみは、自分に残された時間の短さを感じさせた。
痛みを、感じなくなってきている。
視界が暗くなる。
「チッ……!」
アストが、どこかに向けて指を突きつけたあと、ルビーを覗き込む。
それを最後に、ルビーの意識は闇へと沈んだ。
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