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この世界は、大きな壁で囲まれている。
外の世界は荒廃しており、生きられないからだという。
別に、外の世界に出れないことはない。
だがほとんどの人は、わざわざ外に出ようとはしなかった。
ルビーは辿り着いた街——— オブシディアンを練り歩く。
いくつかある街のなかで三番目に発展していると言われるこの街は、傭兵業や暗殺業を生業とする者が溢れるいわゆる裏社会だ。
それでも街と呼ばれるのは、秩序があるからなのだろう。
その証拠にちゃんとした物が売買され、家族の笑顔も溢れている。
ある意味では、他の街より安全なのだ。
ルビーは大通りと思われる石畳の道に出る。
行き交う人々を見ていると、この街が本当に裏社会なのか疑いたくなった。
「困ってる人はいないかな〜」
ぶらぶらと腕を振る。
その仕草が面白かったのか、すぐ近くを通った男の子がクスッと笑った。
ルビーは足を止める。
「今、笑った……?」
ゆっくりと振り返り、男の子を振り返る。
男の子は怯えたように体を震わせ、後ずさる。
その姿はまるで光に怯える小動物だ。
「……ふふっ」
ルビーは口角を上げた。
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