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「もっと笑えー!!!」
男の子はあっけに取られたようにルビーを見上げた。
ルビーはそんな男の子に視線を合わせ、口角に両手の人差し指を添えた。
「ここを……こう!」
ぐいっと指で頬の肉を持ち上げる。
その仕草と顔が可笑しかったのだろう、男の子はぷっと吹き出した。
「おやおや? 笑いが足りないね、もっと笑ってくれないかなぁ」
ルビーは指を上下に動かす。
男の子の顔が、パッと明るくなった。そして、ルビーの真似をして変顔をする。
それを見て、ルビーも一層指の力を込めた。
「ちょっと、どこ行ってたのよ!」
どこからかそんな、焦った叫び声が聞こえてくる。
振り返ると、買い物カゴを持った母親と思わしき女性が走ってきていた。
男の子の姿をみると、安堵したようにため息をつく。そしてルビーを見て口に手を当てた。
「ごめんなさいね、うちの子が」
「お姉ちゃんね、すごい面白いんだよ!」
ペコリと頭を下げる母親と、話したくて仕方なさそうな男の子。
「いえいえ! それじゃあ、さようなら!」
ルビーはにっと男の子に笑いかける。
男の子も、おんなじように笑い返した。
お互い手を振り合い、背を向け合う。
「ふふっ……。お母さんか。良いなぁ」
彼らから離れてから、ルビーはそっと呟いた。
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