はじまりの出会い

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 冷徹な、低い声。  人を寄せ付けない、孤独な響き。 「なら、殺すしかないな」  男はそう言って山から飛び降りた。  黒いミリタリージャケットがそれをふわりと追いかける。  胸当てと白いシャツに、黒いズボン。  右手に付けられた、血を浴びた金属の籠手が鈍く光を反射する。  その光は———男の目から発せられていた。  ルビーは身構える。  雰囲気だけでわかる。  相手は人を傷つけることに慣れた人間だ。  対してルビーは丸腰の少女。  力の差は歴然としている。  男はブーツを鳴らして近寄ってくる。  ルビーは動けなかった。 (あたしには……力がない)  思考が止まった頭に、その事実がすとんと落ちる。     (誰も、守れない)  今日、意気揚々と家を出て、みんなを助けたいとか考えていたのに。  男が腕を振ると、籠手から仕込まれていたらしい剣が飛び出す。  それを、男は躊躇う様子もないまま腕を引いた。  ルビーはなんとか足を動かし飛び退く。 (誰も、救えない?)  突き出した剣は空を突き、男は舌打ちをした。   「よけんじゃねぇよ、何にもできねぇやつが」  男の言葉が、胸を刺す。   (ここで、死んじゃうの?)  違う。 「……あたしは、“何もできねぇやつ”じゃない」  男は動きを止めた。  ルビーは震える手を伸ばして、そこに落ちていた鉄パイプを握る。
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