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1時間後、ヘリとリムジンを乗り継ぎ、果報と乱麻は大手探偵事務所前にいた。それぞれスーツとブランド最新作のワンピースに身を包んでいる。
「久々の外出はいいわね!」と果報はご機嫌だ。
乱麻は視界の隅で、10年ぶりの運命の再会を喜び抱き合う親子を捉えた。
――どういう事情か知らないが、お嬢様のご機嫌のおこぼれに預かるとは彼らも運がいい。
ふと気づくと果報は既に建物内に入ろうとしていた。慌てて後を追う。
「たのもーー!!」
バン! という音と共に果報はドアを開く。
「お嬢様それはあまりにも古風な……おや?」
後ろで眼鏡をクイッと押し上げた執事は、ドアの向こうの異変に気づいた。
静まり返ったフロア。驚いた顔でこちらを見る人々。
「うう……」とうめき声がしたので床を見ると、そこには果報が今しがた開けたドアにぶつかったらしい男性が倒れていた。なぜか近くにナイフが転がっている。
「あら! 大丈夫ですか?! 私なんてことを…」と申し訳なさそうに果報が声をかけた時。倒れた男性に数人が飛びかかって押さえ込み、「助かりました!」と女性が果報の元に寄ってきた。ワァー! と室内にいた人達から歓声が上がる。
「え?」
戸惑う果報をよそに、所長らしい恰幅のいい人物が近づいてきた。
「たった今貴女が倒したのは強盗なんですよ! うちの調査が元で逮捕されて、出所後逆恨みして乗り込んできたんです。
事務員が人質に取られて逃走寸前だったところ貴女が来て……助かりました!」
それを聞き終わった瞬間、フロア内の電話がいっせいに鳴り出した。
「どうした!? 今こっちはそれどころじゃ……。
え? 警視総監の迷子の子猫が見つかった?
1ヶ月も探してたのに? 」
「ずっと追ってた浮気の決定的瞬間が撮れた?」
「行方不明の家出少女が見つかった?
3人同時に? マジで?」
さすがお嬢様、と乱麻は心の中で喝采を送る。
対して果報は黙り込んでいる。頬はふくれ、「面白くない」と顔に書いている。
所長はまじまじと美少女の顔を見た。
「おや、そういえば貴女はもしかして幸福最上院家の――」
「どうやら訪問先を間違えたようでしてよ!
失礼するわ!」
「あっもう少しお礼を」
止める所長の声も聞かず、果報はビルを後にした。
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