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ある日、森の中、熊さんに出会った。
有名な童謡の一節だがオレにとっては童謡ではない。
リアルだ。目の前の現実だった。
秋も深まり行楽日和ぎりぎりの気候になってきた晩秋と冬の間。家族でキャンプに来ていたオレ、辛杉シンは一家から離れ一人でキャンプ場を散策し、ついには冒険の旅に出た。正しくはちょっと山へと分け入った。
日常とは違う木漏れ日の中を、落ち葉を鳴らしてさくさく歩いた。途中でちょうどいい大きさの木の枝が落ちていたのを見つけて拾い上げ、勇者の剣よろしく振り回してみたり素振りしてみたりして。
「えい! やあ! たあ!」
日常とは違う静かな山の中、オレのテンションは逆に上がっていた。
できる。今ならできるかもしれない。
「全集中!」
さて、何の呼吸の何の技を出してやろうか。
考えながらの振り向きざま、ブン! と動かした木の棒が太い気の幹にカンとぶつかった。その衝撃で、なんとオレが握っていた木の棒は真っ二つに折れてしまったではないか。オレの刀がああ!
折れてひゅんひゅんと回転しながら飛んでいく方の枝を見送っていると、それが黒い岩にぶつかった。それが、だ。のそりと動いた。
おわかりいただけただろうか。
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