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 食後の紅茶を飲んでいたときでした。 「……あ」 「どうかしたか?」  黙り込んだ私を、ウィリアム様が怪訝そうに見た。 「ああ、やってしまったようです……」  ぼたぼたと血を吐いてしまいました。  ──ドレスが汚れてしまいました……。  隣にいたシノが私の手首を掴み、(多分)脈を測る。 「脈が弱まっています」 「医者を呼べ‼︎」 「っはいよ」  ウィリアム様とエルム、シノが私の周りに集まってくる……。  自分の鼓動が小さくなっていってるのを感じる──……トクン、トクンと、だんだんゆっくりになっていく。  これ以上ドレスを汚すのが嫌で、口から出る血を手で何度も拭ったけれど、だめでした。いくら拭っても止まらない。とめどなく落ちていく。  お医者様が来た時には、もう、私の周りは血の海でした。  お医者様も一瞬驚いていたようだけど、すぐに手持ちの鞄から、「注射器」というものを出しました。 先が針のように細く尖っていて、薬を直接血管に打ち込むらしい。  ……嫌だなあ。  顔をしかめればしかめるほど、お医者様は嬉しそうでした……それは白衣が血まみれになっても気にしないほどに……。 ちなみに「そそる」と言ってウィリアム様に頭を殴られていました(これが、さでぃすと……というのでしょうか)。  ……腕にチクリと痛みを感じたらすぐ、あれだけ出ていた血が止まりました。  私には、ウィリアム様がホッとした顔で安否を確認してくださった理由がわかりませんでした。  その後──血液と紅茶を調べた結果そこに毒はなく……ティーカップから検出されました。    数分で死に至る毒を飲んで助かったのは奇跡的だと、お医者様──イヴは言っていた(茶色混じりの金髪を1つに束ねた、思わず見惚れてしまうような綺麗な女性だった)。   犯人は、すぐ見つかった。部下の1人で、ウィリアム様の婚姻に反対していた人だった。  その人は私を指差して「こんな化け物とだなんて」と、言っていた。  私は特に何も思わなかったけれど、ウィリアム様は激怒して、その場でその人の首と胴体はお別れしてしまいました。  私のことが気に食わない人は……まだまだ、いるんだろうなあ。  『故にパーティーも、結婚式もしない』という言葉の意味がやっとわかった気がしました。  ここはブラッドリー家──『殺し屋貴族』。常に命を狙われる場所……。  やはり、この家にを嫁にやるなど、正気の沙汰ではないなあ──と、ふと、お父様の顔を思い出した。
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