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4-3
ウィリアムは、目の前でごねる友を切り刻みたくて仕方がなかった。
リナを手放す? 『観賞用』として? そんなこと、できるはずがない。
たしかに最初は、エドワードの言う通り、ブラッドリー家のことを──『仕事』のことを何も知らない、世間知らずの娘を探していた。そして見つけたのがリナだ。
体裁上、形だけの妻が欲しかっただけだったから、容姿も性格も、どうでもよかった。……浪費家でも浮気性でも、なんでも──。
しかし、出会ってみたらどうだろう。妖精と見まがうような美しさ……それでいて聡明で優しく──おそらく、ブラッドリー家にふさわしい力を秘めている。
そんな娘が嫁にきて、手放すなんてことはありえない。
「……リナは見世物ではない」
「ん⁇ もしかして怒ってる? 僕相手に?」
トラスト家は、この国の名門御三家の1つ。エドワードに手を上げればどうなるかくらい、容易にわかる。……だから、この超絶性格の合わないエドワードの『親友』ごっこにも付き合っているのだ。
だが、その『ごっこ』遊びにも終止符を打つのも厭わないほど、ウィリアムの意志は強かった──それが通じたのかもしれない。
「わかったわかった。諦めるよ」
エドワードは「降参」と、両手を上げた。
「そろそろお暇するから、そんな怒らないでよ」
エドワードは手を振って部屋を出て──いく際「でも、あの子が自分の意志で来たら、喜んで僕の物になってもらうから」と、言い残していった。
怒りのあまり壁を殴ったその拳は、壁の中にいた部下のみぞおちにクリーンヒットした。
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