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 ウィリアムは、目の前でごねる友を切り刻みたくて仕方がなかった。  リナを手放す? 『観賞用』として? そんなこと、できるはずがない。  たしかに最初は、エドワードの言う通り、ブラッドリー家のことを──『仕事』のことを何も知らない、世間知らずの娘を探していた。そして見つけたのがリナだ。  体裁上、形だけの妻が欲しかっただけだったから、容姿も性格も、どうでもよかった。……浪費家でも浮気性でも、なんでも──。  しかし、出会ってみたらどうだろう。妖精と見まがうような美しさ……それでいて聡明で優しく──おそらく、ブラッドリー家にふさわしい力を秘めている。  そんな娘が嫁にきて、手放すなんてことはありえない。 「……リナは見世物ではない」 「ん⁇ もしかして怒ってる? 僕相手に?」  トラスト家は、この国の名門御三家の1つ。エドワードに手を上げればどうなるかくらい、容易にわかる。……だから、この超絶性格の合わないエドワードの『親友』ごっこにも付き合っているのだ。  だが、その『ごっこ』遊びにも終止符を打つのも厭わないほど、ウィリアムの意志は強かった──それが通じたのかもしれない。 「わかったわかった。諦めるよ」  エドワードは「降参」と、両手を上げた。 「そろそろお暇するから、そんな怒らないでよ」  エドワードは手を振って部屋を出て──いく際「でも、あの子が自分の意志で来たら、喜んで僕の物になってもらうから」と、言い残していった。  怒りのあまり壁を殴ったその拳は、壁の中にいた部下のみぞおちにクリーンヒットした。
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