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プロローグ
曖昧な記憶は、いつも優しげな女性の声となって彼女の目の前にあらわれる。
この時、あたりは決まって黄昏時で、空は赤から青へのグラデーションをまとっていた。
地平線を歩く、天を衝く巨大な塔のようなストーン・マンが三体。
沈んだ太陽の残光を反射して、ソレらの体を形づくっている花崗岩が煌めいている。
「朝と夜がいっしょに見られる丘、お空に届いてしまうくらい背の高い森、空を飛ぶ大きなタコ、地上に落ちた星空──」
その声は、美しい地平線を見つめる彼女の耳元で、誇らしげに囁いた。
「この世界はすてきな場所でいっぱいなのよ、メイリー」
全身を包みこむ甘い香りを感じながら、彼女はゆっくりと目を閉じた。
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