3.答え合わせ

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 老人は初めにいた安楽椅子に腰掛けていた。 「最初から頭を下げていればいいものを」  疲れ切ったガルドと何とか立てるようになったメイリーを、彼は物置へと案内した。  近くで見ると彼はまだ初老の男性だった。  纏う汚らしい衣服と真っ白な髪のせいで、彼は一段と老いて見える。 「ここだ」  物置には本当にわずかなスペースしかなかった。  どちらか一方は背を丸めて寝るしかない。 「飯の面倒は見ねえからな」  彼はそう言い捨て出て行った。  雑貨屋もどきの店じまいをしに行ったのだろうか。  通りからは相変わらず罵声と何かの割れる音、そしてときどき悲鳴が聞こえてくる。  しかし、それらの出来事が物置にまで到達することは無い。  この場所は見た目よりいくらか安全なのかもしれない。 「大丈夫か」 「うん、心配かけてごめんなさい」  拾っておいた写真機を彼女に渡す。  しかし。  彼女の振りかぶった手のひらによって、錆びたその機械は床へと叩き落とされた。 「あ……ごめん。でも今は、見たくないかも」  そう言ってメイリーは、積み重なった古本の間にからだを埋めた。  今はひとりにしておくべきだろうか? 「ここでどんな食材が売られてるのか気になる。危ないのは分かってるけど、見てきていいか?」  実際彼の足はすでに外へ向かおうとしていた。  こんなに汚染された場所に住む人間たちは、いったい何を食べて生きているのだろうか。  いずれにしてもこの目で見てみるしかない。  好奇心は抑えられない。  彼女をそっとしておくのにちょうどいい機会だ。 「じゃあ、行ってくる」  メモができる羊皮紙とペン、盗まれても痛くない程度の小銭を持って物置を出る。 「いってらっしゃい」  奥からメイリーのか細い声が聞こえた。
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