11 (※微R18描写あり)

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11 (※微R18描写あり)

「……ンッ…。」 達する瞬間、乱れた呼吸が止まる。 手のひらで覆っていた先端から噴き出た白濁は数秒かけてゆっくりと下生えを濡らした。 これだけ汚してはティッシュだけで処理も出来ない。 本当はこのまま寝てしまいたいが、そうもいかなくなってしまった。手洗いついでならいっそシャワーを浴びてしまおうと、重い体を起こしてベッドを降りた。 未だ枯れ切ってはいないから、時々催してしまうのは仕方なくて、自分で慰めている。 瀬崎がいなくなってから、誰かを抱きたいと思った事はないけれど、体は未だ30過ぎなのだ。番がいればきっとそれなりにセックスをした筈だ。 なんたって、精力旺盛なαなのだから。 しかし目の前で瀬崎を失くした俺は、当時未だ18だったにも関わらず、その後数年間不能になった。 朝勃ちすら無かった。 ネットで調べてみたら、そういう例は他にもあるらしい。番を亡くした場合、または番に準じるような関係性だった場合にも、そういう体験をする事はある、と。 番は魂レベルで繋がる事も多いから、わからなくもない。 でも、番に準じる、とはどれ程の範疇を言うのだろうか。 俺と瀬崎は、未だ何も無かった。 俺の恋情以外、2人を繋ぐものなんか、何も。 なのに何故俺は、こんなにも打ちのめされ、まるで片翼をもがれた鳥のようにぼろぼろになって、羽ばたく事すら出来ないのか。 未だに瀬崎の影に自ら縛られて、何処にも進めず歩き出す事も選ばず、同じ場所に止まったままで…。 自分を慰める時に思い浮かべるのは、何時も瀬崎の事だ。 学校帰りににわか雨に降られて濡れたシャツを肌に張り付かせて苦笑いしていた姿。 部屋で一緒に映画を見ている途中で眠くなって俺の肩に頭を持たせかけてきた時の温もりと心地良い重みと優しい体臭。 暑い季節にはハーフパンツから細くすんなりと伸びた足が 俺を誘っていた。 いつもいつもいつも。 そこにいるだけで、何をするでなくとも 瀬崎は俺の劣情を誘った。 ほんの少し、むくれて尖らせた唇でさえも。 何時だって瀬崎を抱きたかった。 優しく慈しみながら抱きたい時もあれば、凶暴な欲に任せて獣のように乱暴にぐちゃぐちゃに犯してやりたい時もあった。 俺は瀬崎がΩだとわかる前から、ずっとずっとアイツだけを見ていた。アイツだけを抱きたかった。 βでも良い。ほんとはアイツを俺の人生の伴侶にしたかった。 瀬崎の為にと思って何も告げずにいるつもりだったけれど、俺は自分の本能を信じたかった。 運命だと信じたかった。 だって結果的にお前はΩだったじゃないか。 それが運命じゃなくて何だと言うのか。 うっすらかいていた汗とペニスを汚していた精液を熱いシャワーで流して、タオルで体を覆うと仄かな洗剤の香りがして、少し気分が落ち着いた。 つい2時間程前の事を思い出す。 日佐人君の様子が、最近僅かに変わったように思ってはいた。 互いの存在に慣れて来たからだろうか。 最初に少しばかり感じた警戒心も、今は無いようだ。 (…懐かれた、のかな…?) 一人っ子で、親族には歳の近い者はいないと言っていた。 兄のような存在が欲しかったのかもしれない。 少し、年齢は離れているけれど、世の中には15歳くらい歳の離れた兄弟姉妹もいない訳ではない。 人生の岐路で歳上の人間に相談したいと思うような時は、結構あるものだし、ましてや両親が共働きで多忙なら余計に頼れる存在が欲しくなってもおかしくはない。 本人が望むのなら、俺の我儘に付き合ってくれている日佐人君のそんな存在になる事も吝かではない。 望まれる内は。 (どうせ、そんなに長い期間ではないだろうしな。) こんなだらしない大人に見習う所なんか無いと、彼程に賢い子なら遅かれ早かれ気づく。それ迄の。 少し濡れた鞄をチェストの上で乾かしていて、その少し離れた横にスマホも置いていたので近づいて手に取る。 (…あ、日佐人君から来てる…。) さっきフレンド追加したんだった、と思い出した。 おやすみなさい、と素っ気ない文。もう1時間も前に。 その間、年甲斐もなくオナニーに耽っていたのを思い、急に恥ずかしくなった。 それにしても今日は帰ってくるなり、妙な気分になってしまった。何故だろうか、と不思議な気分になる。 …既読をつけてしまったから返しておくべきだろう、と考え、おやすみとだけ返信した。 彼に会えるのは、また1週間後だ。 その日迄、また味気無い日常を淡々と過ごす。 次の金曜の夜だけを待って。 けれど、その日から後、日佐人君がファミレスに現れる事は無く、LIMEに連絡が入る事も無かった。
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