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寮の入り口で一旦のりおと別れた後、急いで自分の寮の部屋へ戻ってきた。
ドアを開けると、沢山のペットボトルや栄養ゼリーのゴミが散乱している。
これでは、人を呼べる状態ではない気がする。急いでカバンをおろし、ごみ袋を取り出して掃除を始めた。分別などしている暇はないので、適当にゴミ袋にごみを入れた。掃除して出たゴミ袋は、全て押し入れに詰め込んだ。
ある程度片づけた部屋の様子を確認した後、冷蔵庫を確認し、のりおに出せるお菓子か飲み物がないか確認してみたが冷蔵庫には、ゼリーしかなく、のりおに出せるものは何一つなかった。
慌てて、財布をつかみ寮のすぐ近くの外にある自動販売機に向かった。
自動販売機の飲み物はどれも高くて、できるだけ安い飲み物を探していると
「おい、お前お金持ってるだろ?俺にくれよ」
人を脅すようなどすの利いた声がかすかに聞こえた。あまり関わりたくなかったので、できるだけ振り向かないように、声のする方向へ振り向かないようにしながら一番安いスーパーミネラルウォーター水のボタンを押した。
「い・・・す。やめ・・」
自販機からペットボトルを取り出して早く帰ろうと寮の方向へ歩き始めた。
かすかに聞こえる反抗した声が弟の声に似ていた。振り向いて声のした方向へ駆け寄った。
そこには、素行の悪い生徒が弟を今にも殴りかかろうとしていた。弟は目をぎゅっとつぶっている。俺は慌てて持っていたスーパーミネラルウォーター水のボトルを素行の悪い生徒の顔面目掛けて投げた。
ボトルは見事、素行の悪い生徒の顔面にヒットした。
素行の悪い生徒は、ボトルが顔面にあたった衝撃で、倒れて気を失った。
弟を確認すると、目を見開きびっくりした顔をしていた。俺には気付いていない。優しい弟は、慌てて倒れている素行の悪い生徒の様子に青ざめた。携帯を取り出して誰かに連絡した。しばらくすると幼馴染と俺のクラスの教師が来た。その様子を一部始終確認し、弟の安全を確認すると、急いで俺はその場を離れた。
今この場で一番危ないのは多分俺だ。自動販売機で買った水は回収するのを諦めて急いで寮の部屋まで走って帰る。
寮の廊下では、罰当番をしている生徒が廊下を掃除したばかりのようで、湿っていることを急いでいた俺は気付かなかった。湿った廊下に足を滑らせた。やばいと思い、腕で顔面だけは守ろうと迫りくる床に手を突こうとするが、手も床にはつかず思いっきり空回りして頭を思いっきり地面に打ち付けた。その衝撃で、俺の体はカーリングストーンのように摩擦を感じられないようなきれいな滑りをして見せた。
恥ずかしすぎて、顔を上げられない。
とんとんと、肩を叩かれた。そっと、顔を上げると、のりおが俺の姿を見て、涙目で笑いをこらえていた。
「どうしたの?」
俺は、慌てて立ち上がって、何事もないように膝をはたきながら
「なんでもない」
と言い放った。
のりおは、吹き出した。
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