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そう言ったものの、
暑い。暑すぎる。外は、危険だ。歩きながら外に出たことを後悔した。
部屋から出てわずか20分まだまだ道のりは長い。
「やっばい。倒れそう」
小さな日陰を見つけて、そこでお水を飲んだ。しばらく佇んでいると、金髪のスーツの男と目が合った。このスーツの男が笑顔で駆け寄ってきたので、軽く会釈し、慌てて逃げる。
「え、こわ。あんな初対面の人に笑顔で駆け寄ってくる奴がいるか。」
日陰にずっといたい。という気持ちなど忘れて必死に走った。走りながら、後ろを見ると、そのスーツの男も鬼の形相で追いかけてくる。なぜか彼はすごく怖かった。
「stop!」
などと、言っているが、止まるはずがない。彼は警察ではないため、止まらなかったとしても罪に問われる心配もないはずだ。
走って、走って、建物の影に隠れた。後ろを見るとスーツの男は追ってきていなくてほっと安心をする。
そっと、建物の影からでて息を整えながらマップアプリを起動して時間を確認した。20分ほどスーツの男と追いかけっこをしていたらしい。
「最悪・・・」
どこか涼しいところでもないだろうか。探してみるがここは高級住宅街どこを見ても高そうな建物ばかり後、10分したら目的地に着くはずだ。
「よし、がんばるぞ」
そう言って、目的地に向かって歩き始めた。
しばらく歩いていると、高級住宅街には似合わない木製の古い建物が見えた。萩商店と書いてある看板を見つけて、目的地へつけたことにほっとした。そっと、ドアを開けるとうちわを仰ぎながらおじさんが不愛想に
「いらっしゃい」
と呟いた。俺は、おじさんに会釈をして商品を見て回る。どれも安くて嬉しい気持ちになった。食費を安く抑えたらその分参考書が買えると嬉しくなる。
必要な分だけカゴに入れておじさんに
「お願いします」
とレジをお願いした。おじさんは、びっくりしたように軽くうなずいて、商品をレジに通していく。
「おまえさんは、近くの学校の生徒さんかい?」
そう言われたので頷くと、おじさんは不機嫌そうな顔になった。
「なんで、こんなぼろっちいお店に買い物に来たんだ。親がたくさんお金もっているだろ。」
そう言って鼻で笑った。
俺は笑ってため息をついた。
「いえ。家の人は中学生まではお金を払ってくれましたが、高校からは一円たりともお金を出してくれません。そういう約束ですから。なので、特待生制度で無料で学校に通うことができているのですよ」
でも、ため息をついた。
「でも、学校がないので、今はお金がないんです。父の遺産を少しずつ切り崩して生活をしています。」
おじさんは、いじわるそうな顔をして
「世の中には、たくさんお前と同じような奴ごまんといるだろうよ。不幸自慢をして同情を誘う気か」
俺は、言っている意味が解らなかった。けど、おじさんが俺にいい感情を持っていないという事だけはわかった。なので笑顔で言った。
「へ、俺は自慢をしていたのですよ。自分の実力で、特待生制度を勝ち取った自分ってすごいでしょって!」
それに、この学校に通うと決めて、通い始めてお金がないのに働きもせずに父の大切な遺産を切り崩しながら生活をすると決めたのも自分だ。大切な弟と生活したいという目標を持って日々を立てて生きてきた。それを不幸だとも思わない。買い物した分のお金を置いて、食品を持っておじさんに軽く会釈する。
「また来ますね。」
嫌なおじさんだが、安さにはかなわない。殴られなきゃ蹴られもしない。嫌味だけだったらなんとかなるお店に行かないという選択肢はない。おじさんをちらりとみると変化な顔をしていた。ので、してやったりって気持ちになったりした。沢山の食品を使って作った食べ物はすごくおいしかった。
よし、また行こう。
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