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お店の中は、誰もいなかったけれど諒は慣れた様子で、窓の近い日当たりのいい席に座った。テーブルの上に置いてあるメニュー表を取り出し俺にも差し出した。
「なに食べたい?」
諒から、メニュー表を受け取ってペラペラと適当にめくる。どのご飯も彩り豊かで美味しそうだったけれどあまりどれも食べる気にはなれなかった。諒をちらりと見てみるとスマホを見ていて早くご飯を決めなきゃと少しだけ焦る。
タンポポのようなきれいな黄色が見えてふとページをめくる手を止めた。
「これがいい。これが食べたい。」
「じゃあ、決まりね。このお店は私の行きつけなのよ。どのご飯も美味しいの。」
諒は、「すいません」と少しだけ大きい声で店員さんを呼んだ。すると、すぐに店員さんはやってきた。店員さんは、むすりとした顔をしていたけれどとても綺麗な顔をしていた。諒から注文を受け終えると、一言もしゃべらずに軽くお辞儀をして厨房の方へ戻っていった。諒はうっとりとした顔で店員さんの後ろ姿を見つめている。俺の視線に気づいてちょっとだけ顔を赤くした。
「彼、すごく不愛想でしょ。でも彼の作る料理はすごく美味しいから食べて欲しいわ。」
「諒、店員さんのこと好きなの?」
「あら、気付いちゃった?」
諒は顔を赤くした。
「か、彼、私の幼馴染なの」
諒は、小さい声でそう言った。
「わ、私、正直言っていかついじゃない?可愛いものなんて絶対私似合わない。でも、本当はお人形さんとかウサギさんとか、、、か、かわいいものが好きなの。それと、キラキラとした宝石みたいな綺麗なものも好き。でも、私そのせいで小学生の頃、沢山いじめられちゃったの。
たくさん心無いこと言われちゃったわ。でも、彼はね。『いいね』って言ってくれたの。その一言になんでか、分からないけれど救われたの。なんだか自分を認めてもらえた気がして…」
「そっか…」
諒は俺を見て、にこりと笑った。
「今も怖い。いじめられたくなくて、柔道なんか始めちゃったりして、、、
誰にでも愛想ふりまいたりしちゃって、、学校での私本当の私じゃないの。私の事分かってくれるのは彼だけだって思ってた。
でも、鈴ちゃんあなたを見て、」
「おまたせしました」
店員さんが話を遮るように料理を机の上に置いた。
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