迷子(二)

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迷子(二)

 一夜滞在した町で、を越えればすぐ人里だ、と聞いたまでは良かったが……晴道も思い当たって天を向く。 「ああ、そっちかあ……だが、あれは山というか、せいぜい丘じゃなかったか?」 「おれもそう思いましたけど。まあ、人の感じ方はそれぞれですから」  旅慣れているが故、大山の隣にあった控えめな山は、ちょっと起伏の激しい道くらいにしか認識していなかった。  押し寄せてきた疲れに、しばし立ち尽くす。 「……戻りますか」 「……そうだな」  ため息混じりに踵を返した時、ふと晴道の足が止まった。 「どうしたんですか?」  小首を傾げた玉瀬に短く告げる。 「人の声が聞こえたぞ」  途端、玉瀬もはっとして耳を澄ませた。息をも静かにその場に留まる。 「―――……」 「―――!」  ややあって、二人は目を見交わせると頷いた。  内容までは分からないが、確かに複数人のやり取りが耳に届いたのだ。  彼らは引き寄せられるように、伸び過ぎた草を掻き分けて、声のする方へ駆けていった。
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