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提案(一)
「あのぅ、この男……俺らの集落に連れていっちゃあ、いかんかのお?」
意外な申し出に、師弟は目を瞬いた。
「集落で罰を下すか? そりゃあ、今まで随分と迷惑を被ってきたわけだからな」
晴道の言葉に、しかし、正弥は首を振った。
「いや、俺たちもそんな大層な立場と違うけえ。罰するなんぞ、易々とは言えん」
「それじゃあ、なぜ連れていきたいんだ?」
問われた正弥は、少し顔を強張らせながらも、男に視線を移す。
「聞きたいんじゃ……なあ? あんたは俺らに、知っとることを話す責があるじゃろう。それが済んだら、あんた自身の昔話も聞いたるけえ」
言われた途端、男は大きな笑い声を響かせた。正弥がひゅっと息を呑む。
「わしの話を聞くだと? 思い切り怯えてるくせして、よく言えたもんだな」
とっさに言葉が見つからず、身を硬くした正弥に代わって、玉瀬はすぐに言い返した。
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