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第三章6『探偵ごっこ』
「よし、じゃあ取り敢えず愛海ちゃんに話を聞いてみるか。」
「うん、でもどうやって切り出すの? 『ストーカーのことで話したいことない?』なんて聞かないよね?」
「それは今から考える。」
「そういうところ私たち似てるよね。」
出来れば似ているのはそこだけであって欲しい。
廊下を進み愛海ちゃんの部屋へと進む。(もちろん場所は知らないので楓について行っているだけだが。)
コンコンッ
扉をノックする。どうやらここが目的地らしい。
「愛海? いる?」
ガチャッ、しばらくして扉が開いた。
「どうしたの?二人揃って。」
「いや、ちょっと話したいことがあって。いい?」
「別にいいけど、やめてね?重い話は。」
ある意味今からするのは重い話かもしれない。
二人は部屋に入る。部屋の広さは楓と同じか少し広い程度だ。奥にベット、本棚があり、部屋に入って左に机が置いてある。机の上の状態を見るに勉強中だったようだ。
「で?話したいことってなに?」
「単刀直入にいうね、愛海今ストーカーのことで何か話したいことない?」
「え、何でストーカーのことお姉ちゃんたちが知ってるの?」
「あ、えっと〜、話してるのが聞こえちゃって……」
ボロが出たな、確かストーカーの話を聞いたのは明日の六時前だ。今そのことを知っているはずがない。
「別に話したいことなんてないよ。」
「本当に?脅されてるとかはない?」
流石に何もない事はないと思うのだが……
「脅される? 流石にそこまでされてたら警察に相談するよ。何言ってるの二人とも。そんなに私のことが心配なの?」
表情を見る限り嘘は言っていないようだ。真木一家は顔色で嘘かどうかを判断できる点、楽である。
「そうか……じゃあ明日早朝に何か用事とかは?」
「早朝って五時とかですか? そんな時間に私起きれないですよ。本当にどうしたんです?」
「いや、別に何にもないんだったらいいんだけど……取り敢えず、明日の朝は何があっても家から出ちゃダメだよ?分かった?」
「え……言われずとも朝に家から出ようなんて思わないから安心して?」
「分かった。じゃあおやすみ。」
「はーい、おやすみ〜」
そう言って部屋を出る。時計を見ると時刻は十時。
「どうする?本人はああ言ってるけど。」
「張り込む。」
「マジか。寒いぞ?ここ。」
「毛布持ってこよう。という訳で、天野君?GO!」
「俺かよ……」
家の構造上愛海ちゃんの部屋は廊下の一番奥、どうしても部屋に行くにはこの廊下を使わないといけないため、張り込みは確かに効果的である。しかし、佳奈美さんたちに何て説明すれば……
「はい、毛布。」
「ありがと。ローテーションで寝ようか。私が最初に三時間見張っとくから。そこから三時間交代ね。」
「別にいいけど、大丈夫か?」
「何が?」
「いや、お前の場合、俺が起きたら寝てそうだから……」
「失礼な!今回ばかりは本気で取り組むんだから!」
「それならいいけど、まあ寝させてもらうよ、起きてるんだったら、三時間経ったら起こしてくれる?」
「え、一応、一応だよ?タイマーかけてて欲しいなぁ?」
「あんだけ意気込んで不安なのかよ……」
「ま、万が一にも失敗は許されないからだよ!」
「了解……じゃあおやすみ。」
「はーい。」
————————————
ピピピッ、ピピピッ、
いつもよりやや控えめなアラームで目が覚める。
時刻は一時、どうやら三時間経ったようだ。楓はというと。
「あ、おはよう天野君、激闘だったよ……後三十っ分遅かったらやられてた。」
睡魔に健闘していた。明らかに瞼が重そうである。
「お疲れ、じゃあ交代で。」
「あとは任せた……おやすみ。」
そう言って楓は死んだように眠りについた。お前の死を無駄にはしない……
さて、この時期に四時となると少しずつ明るくなってくる。誘拐するとしたら暗い方が都合がいいだろう。という事は俺の担当時間に犯人が来る可能性が高い。これは責任重大だ。心してかからねば……
————————————
ピピピッ、ピピピッ、
何もないまま四時になってしまった……
「おはよ、天野君、どう?異常なし?」
「怖いぐらい異常なし。これもしかして犯人来ないんじゃないか?」
「そんな事ないよ、だって愛海は家を出る理由なんてないって言ってたじゃん。」
「そうなんだけどなぁ。ちょっと愛海ちゃんがまだいるか見てくれないか?」
「え?でもずっと見張ってたんでしょ?」
「そうなんだけどさぁ、もしかしたらイリュージョンで消えてるかも?」
「そんな事になってたらお手上げだって……」
そう笑いながら楓はドアをそっと開けた。
「どうだ?」
「嘘……」
楓の様子がおかしい。急いで扉を開ける。
そこには誰もいない部屋が広がっていた。
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