第三章6『探偵ごっこ』

1/1
前へ
/19ページ
次へ

第三章6『探偵ごっこ』

「よし、じゃあ取り敢えず愛海ちゃんに話を聞いてみるか。」    「うん、でもどうやって切り出すの? 『ストーカーのことで話したいことない?』なんて聞かないよね?」    「それは今から考える。」    「そういうところ私たち似てるよね。」    出来れば似ているのはそこだけであって欲しい。        廊下を進み愛海ちゃんの部屋へと進む。(もちろん場所は知らないので楓について行っているだけだが。)    コンコンッ    扉をノックする。どうやらここが目的地らしい。    「愛海? いる?」    ガチャッ、しばらくして扉が開いた。    「どうしたの?二人揃って。」    「いや、ちょっと話したいことがあって。いい?」    「別にいいけど、やめてね?重い話は。」    ある意味今からするのは重い話かもしれない。    二人は部屋に入る。部屋の広さは楓と同じか少し広い程度だ。奥にベット、本棚があり、部屋に入って左に机が置いてある。机の上の状態を見るに勉強中だったようだ。    「で?話したいことってなに?」    「単刀直入にいうね、愛海今ストーカーのことで何か話したいことない?」    「え、何でストーカーのことお姉ちゃんたちが知ってるの?」    「あ、えっと〜、話してるのが聞こえちゃって……」    ボロが出たな、確かストーカーの話を聞いたのは明日の六時前だ。今そのことを知っているはずがない。    「別に話したいことなんてないよ。」    「本当に?脅されてるとかはない?」    流石に何もない事はないと思うのだが……    「脅される? 流石にそこまでされてたら警察に相談するよ。何言ってるの二人とも。そんなに私のことが心配なの?」    表情を見る限り嘘は言っていないようだ。真木一家は顔色で嘘かどうかを判断できる点、楽である。    「そうか……じゃあ明日早朝に何か用事とかは?」    「早朝って五時とかですか? そんな時間に私起きれないですよ。本当にどうしたんです?」    「いや、別に何にもないんだったらいいんだけど……取り敢えず、明日の朝は何があっても家から出ちゃダメだよ?分かった?」    「え……言われずとも朝に家から出ようなんて思わないから安心して?」    「分かった。じゃあおやすみ。」    「はーい、おやすみ〜」    そう言って部屋を出る。時計を見ると時刻は十時。    「どうする?本人はああ言ってるけど。」    「張り込む。」    「マジか。寒いぞ?ここ。」    「毛布持ってこよう。という訳で、天野君?GO!」    「俺かよ……」    家の構造上愛海ちゃんの部屋は廊下の一番奥、どうしても部屋に行くにはこの廊下を使わないといけないため、張り込みは確かに効果的である。しかし、佳奈美さんたちに何て説明すれば……    「はい、毛布。」    「ありがと。ローテーションで寝ようか。私が最初に三時間見張っとくから。そこから三時間交代ね。」    「別にいいけど、大丈夫か?」    「何が?」    「いや、お前の場合、俺が起きたら寝てそうだから……」    「失礼な!今回ばかりは本気で取り組むんだから!」    「それならいいけど、まあ寝させてもらうよ、起きてるんだったら、三時間経ったら起こしてくれる?」    「え、一応、一応だよ?タイマーかけてて欲しいなぁ?」    「あんだけ意気込んで不安なのかよ……」    「ま、万が一にも失敗は許されないからだよ!」    「了解……じゃあおやすみ。」    「はーい。」    ————————————    ピピピッ、ピピピッ、    いつもよりやや控えめなアラームで目が覚める。    時刻は一時、どうやら三時間経ったようだ。楓はというと。    「あ、おはよう天野君、激闘だったよ……後三十っ分遅かったらやられてた。」    睡魔に健闘していた。明らかに瞼が重そうである。    「お疲れ、じゃあ交代で。」    「あとは任せた……おやすみ。」    そう言って楓は死んだように眠りについた。お前の死を無駄にはしない……    さて、この時期に四時となると少しずつ明るくなってくる。誘拐するとしたら暗い方が都合がいいだろう。という事は俺の担当時間に犯人が来る可能性が高い。これは責任重大だ。心してかからねば……    ————————————    ピピピッ、ピピピッ、    何もないまま四時になってしまった……    「おはよ、天野君、どう?異常なし?」    「怖いぐらい異常なし。これもしかして犯人来ないんじゃないか?」    「そんな事ないよ、だって愛海は家を出る理由なんてないって言ってたじゃん。」    「そうなんだけどなぁ。ちょっと愛海ちゃんがまだいるか見てくれないか?」    「え?でもずっと見張ってたんでしょ?」    「そうなんだけどさぁ、もしかしたらイリュージョンで消えてるかも?」    「そんな事になってたらお手上げだって……」    そう笑いながら楓はドアをそっと開けた。    「どうだ?」    「嘘……」    楓の様子がおかしい。急いで扉を開ける。              そこには誰もいない部屋が広がっていた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加