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第二章3『下調べは念入りに』
「真木、どうだ?出来そうか?」
「もちろん。情報はいるけどね。」
「おい、さっきからなんの話をしてるんだ?俺だけ仲間はずれじゃないか。」
「あぁ、翔はこのページを読んでいてくれ。」
「お、おう。」
この前作ったホームページを読み始め、羽山の顔が何かを悟った物に変わったのを天野は見なかった事にした。
「なぁ、啓太?これ、まさかとは思うがお前らのことか?」
「大当たり。」
「冗談だよな?」
「真木、見せてやれ。」
「はいはい、コーヒーは熱いからミルクにしよっと。」
そこからは、俺が巻き戻しを見た時とほぼ同じリアクションだった。(巻き戻しを認知出来ているのは俺が翔に触れているからだ。)
驚き、疑い、探る、そして最後には認めるのだ。少し違った事といえば、翔は天野よりも早くに認めたことぐらいだ。きっとSF系の話をよく読んでいるのだろう。
「なるほど、確かにこの能力があればプロポーズした時間に戻れるかもしれない。」
「そうだろ?どうだ、やってみるか?」
「もちろん、願っても無いチャンスだ。」
「ねぇ、羽山さん、プロポーズってどんな感じだったんですか?」
確かにそれは気になる。もしかしたらそこに振られた原因があるかもしれないからな。ちゃんと考えてるじゃないか、真木。そう思い、彼女の顔を見てみる。
おっと、俺の考えすぎだったようだ。真木の表情は乙女のそれだった。つまり、ただの好奇心での質問だったのだ。見直して損した。
「え、普通のプロポーズだよ。」
「俺も聴きたいなぁ。」
さりげなく後押しする。
「お前もかよ、本当に普通だぜ?デートの帰りに公園に寄ってな、噴水の前で花束を渡したんだ。」
へぇ〜、本当に普通だな。しかし指輪じゃなくて花束か、一体どこから取り出したのやら。
「なんて言って渡したんですか?」
真木は乙女モード継続中のようだ。
しかし、ここまで普通だとプロポーズの言葉も普通だろ。「結婚してください。」とか「これからもずっと側にいてくれ」とか。
「え、それも言うのか?なんか恥ずかしいなぁ。」
「お願いします。」
「僕と結婚してください、だよ。ありきたりだろ。」
そらきた。本当にありきたりだ。
やはりプロポーズに原因はなかったようだ。と言うことはただ単に翔とは結婚までは行くつもりではなかったのだろうか。それはそれで翔が可哀想ではある。
「翔、その公園に案内してくれないか?」
「別に良いけど、何するんだよ。」
「過去視かな。」
「へぇ〜、そんなことも出来るんだな。」
俺ではなく真木がだが。
翔に案内され天野と真木は公園に向かった。しかし天野、その途中でまさかのことに気づく。
「ここだよ。」
「ここって…」
なんと連れてこられたのは、例の老夫婦の散歩コースである。なんという偶然。ここら辺もっと公園あるだろ。
「え!羽山さん、ここで告白したんですか⁉︎」
おっと、真木もここをよく通るのだろうか?
「そうだけど、どうしたの?」
「羽山さん、落ち着いて聞いてください。ここにはある有名な噂があるんです。」
それは天野も初耳だ。
「ここの公園はですね。昔ある女の人が自殺した公園なんですよ。しかも噴水といえば、その正面の木で首吊りをしたらしいです。」
うっわ、一気に怖くなってきたな。
「なんでも、その女性の旦那さん、何人もの女性と浮気をしていたらしく、そのことを責めると、なんと「別に良いだろ、結婚したのはお前なんだから。」と言いだし、しまいには他の女とどこかに行ってしまったらしいんです。そのことに耐えきれず自殺を…」
そんな怖い噂があったのか…、おいおい、あの老夫婦、なかなかの場所で散歩してるなぁ。
しかしそれ以上にショッキングな内容を真木は口にする。
「それ以来、ここでのプロポーズは『お前とはやって行けない。』という意味を表すようになり、別称、縁切りの公園と言われています。」
おっと?これはもしや…
その話を聞いていた翔の顔色は公園の街頭に照らされ、真っ青になっているのが見えた。
これは全面的に翔が悪いな。
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