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第二章6『はやとちり』
ここまできたら俺が直接聞きに行った方が分かりやすい。もしかしたら碧さんは嫌がるかも知れないが……
「え、やめてくれよ…」
「大丈夫、どうせ時間は戻すんだから。」
「そうだけどさ……」
「私もこの際直接聞いてきた方が早いと思います、羽山さんが聞きに行くわけにもいきませんし……」
プロポーズを断られ、走り去った次の日に理由を聞きに行くのはかなりくるものがあるだろうからな……
「じゃあ…、よろしく頼むよ、俺はここでコーヒー飲みながら待たせてもらうから……」
あまり乗り気ではなさそうだが、実際この方法が一番手っ取り早い。ゲームでいうところの攻略本を手に入れる訳なのだから……
などと考える天野の頭に一瞬気になるワードが横切ったのだが……きっと気のせいだ、気のせい……、もう少し忘れていなければ。
二人は翔から碧さんの家の住所を聞き、喫茶店を出た。
碧さんの家はちょうど例の公園とレストランの真ん中あたりにあるマンションだった。きっと翔はあまり遠くないところを気にして選んだのだろう。微妙な気配り……
マンションのオートロックにかけるから聞いた番号を入力し呼び出しボタンを押す。すると三回目のコールで聞いたことのある声が聞こえてきた。
「はい、どなたですか?」
碧さんだ、どうやら外出はしていなかったようだ。
「すみません、翔の友達なんですけど、お時間いただけますか?」
「え、翔くんの?えーっとそれって昨日のことと何か関係が?」
流石にこのタイミングだとそれが真っ先位思い浮かぶのだろう、ここは正直に答えるべきだ。同じことを考えたのだろう、真木が先に答えた。
「はい、昨日の件で少し伺いたいことがあってきました。」
さて、ここで断られたらそれはもう仕方がない。碧さんがシンプルに翔のことを嫌いだっただけの話だ。
「そうですか、どうぞ入ってください、私も少し話しておかないといけない事がありまして……」
そう碧さんが言うとオートロックが開く音がした。どうやら翔のことが嫌いだからと言うわけではないらしい。よかったな翔……
エレベーターで上がり碧さんの部屋の前まで来るとすでにそこには碧さんがドアを開けて待っていた。
「どうぞ、上がってください。」
「「お邪魔します。」」
そのまま二人はリビングに連れられそこにあった椅子に座るよう勧められた。友達がよく来るのであろうか四人用テーブルであった。
「それで、聞きたいことっていうのは?」
碧さんが三人分のお茶をテーブルに出し早速本題の質問をしてきた。
「はい、何故プロポーズを断られたのか理由を聞きたかったんです、下で突き返さなかったということは嫌いだったというわけではないのでしょう?」
「やっぱりそのことですよね、翔くんはなんて言ってました?」
「え〜っと、なかなかにショックを受けてましたね…」
真木は少し言いづらそうに答える。
「ですよね……、私もまさかあのタイミングで帰っちゃうなんて思いませんでしたから……、彼、スマホ昨日から見てないんじゃないでしょうか、あんなに電話したのに……」
おっと?電話してたのか。
「なぜ電話を?こう言うのもなんですが……追い討ちをかけるのでは?」
確かにここで電話をするのは翔の残りライフ的に少しよろしくない。そんな中なぜ電話を……
「実は、プロポーズを断った時に理由をちゃんと説明しようと思ったのですが翔くん、ショックでどっか行っちゃって……」
なるほど、翔の心がもう少し強かったら早めに真相は分かっていたということか……、ならあの時公園で言いかけていたのも……
翔……、もう少し粘ろうな。
「その理由というのは?」
そんなことを天野が考えている中真木はしっかりと質問を進めていく。
さあ、何がダメだったんだ?
「実は、先月母が認知症と診断されて…、父がいない今、これから母の介護で大変になるのに翔くんに迷惑はかけたくないと思って。」
なるほど、プロポーズを断ったのは優しさゆえだったのか。なら聞かないといけないことがあるな。
「翔と結婚することは嫌ではないんですね?」
「当たり前ですよ、あの時のプロポーズ、すごく嬉しかったんですから。」
ということはこれに関してはあとは二人の問題だ。これ以上は詮索しないでおこう。
「すみません、トイレ借りてもいいですか?」
「どうぞ、リビングを出てすぐ右です。」
「ありがとうございます。」
なぜこのタイミングで、と聞きたいところだが振り向いた時には真木は消えていた。そんなにギリギリだったのか?
「あの、聞くのが遅いかもしれないんですけど、翔くんとはどういう関係で?」
確かに、友達だとしか言っていなかったな…、よくこんな奴らを家にあげたものだ。ひと段落ついたら注意しなければ……
と言っても、まさか自殺を止めに入ったと言っては碧さんを心配させるだけだし、『何でも屋』のことを話すわけにもいかない、間違いなく追い出される。
そういえば翔、俺と同じゲーム好きだったな。
「ゲーム仲間です、よく一緒に遊ぶんですよ。」
「あ〜、翔くんがいつもテレビで真剣にやってるあのゲームですか……」
いや翔、彼女いる時ぐらいゲームやめろよ……。
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