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地球レポート5 猫じゃらし、猫らしく
吾輩の目下の観察対象は、吾輩を拾った男――矢月 愛司である。
愛司とはなんとも愛にあふれそうな名前であるが、本人としては持て余しているらしい。名前とは無縁な吾輩には分からぬ感覚である。
そんな矢月は吾輩に有り余る愛情を注いでくれている。
猫であると思い込んでいるところ悪いが、吾輩は猫ではない。
だが、猫であると思い込んでもらわねば困るというもの。
「また変なポーズしてる……」
吾輩の「宇宙との交信ポーズ」が、矢月にはどうにも気になるらしい。
後ろ足で立ち上がり、前足を合わせ、首を小刻みに揺らし、瞑目するのがハイデガール式である。
矢月もよく「いただきます」と言いながら、手を合わせている。
それと似ている。
とはいえ、吾輩が外なる宇宙から来たハイデガール星人であるということがばれることはないだろう。なぜなら、もっと変なポーズをする猫が世の中には存在しているからである。
吾輩、まだ猫と出会ったことはないが、矢月に動画で見せてもらったことはある。動画というのは、地球人が取りつかれている中毒性の高いコンテンツである。
少なくとも日本人は、頭の中で描いたイメージを他者と共有する能力がないからだろうか、こうした外部ツールに強い関心を覚えるらしい。
しかし、動画は我々にとっても非常に役に立つのである。
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