(一)

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「そういえば、例の法律、通りましたね」 「やっとだね。帰ったら書類作らなきゃいけないな」  益田(ますだ)清四郎(せいしろう)は車を運転しながら、助手席にいる宇田(つよし)の言葉に応えた。 「これで戸田さんのおばあちゃんと小浜のおじいちゃんも、もっと来られるようになりますね」 「そうだね。定員一杯で週一回しか来られなかったもんね。これでそれぞれのご家族は安心できるだろうねえ」  そう言いながら、益田は車のウインカーを出して、路上に車を停めた。  そして益田と宇田は「介護・デイサービスの阿幸地(あこうじ)会」と印字されたドアを開けて降りた。  二人は「須佐」と表札の出ている家の玄関チャイムを鳴らした。そしてインターホンから「はい」という声が聞こえると、益田は「デイサービスのお迎えに来ました」と告げた。 (続く)
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