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「やっほー。誰かに聞いた?」
その日の放課後、彼女は図書室に来るなり当たり前のようにカウンターに入ってきて僕の隣に座った。同じ図書委員だったっけ、と錯覚しそうになり、頭を振って追い出す。
「聞いたけど知らないって言われた」
「あ、そうなんだ。ちなみに誰に聞いたの? 友達?」
「……中学からの同級生」
言いながら嘘はついてないと自分を擁護する。野中君は確かに僕と同じ中学に通っていた同級生だ。でも、ただそれだけで、彼と友達かと聞かれたら「はいそうです」とは頷けなかった。
「友達、じゃないの?」
「うん。友達というか、知り合い?」
「ふーん」
彼女はそう言って腕を組み、回転椅子をゆっくり回しながら「うーん」と唸り始めた。相変わらず図書室には僕と彼女以外の人物はいない。紙独特の匂いが充満する室内に、唸り声だけが響いた。
やがて回転を止めた彼女は、僕に向かって言った。
「今日はあたしの名前当てクイズは横に置いといて、新しいクイズを出します」
何故横に置くんだ。自然と眉が中央に寄る。そのまま難色を示したつもりだったが、彼女はお構いなしに続けた。
「友達の定義とはなんでしょう?」
「…………」
それはクイズなのだろうか。クイズと言うからには答えがあるということで、自分の考えを披露していい訳ではない。僕は徐に立ち上がってとある本棚の前まで行き、1冊の分厚い本を持ってカウンターに戻った。彼女は何も言わず僕の動向を見守っている。
本を開く部分に印刷されている『あかさたな……』部分のた行から後半の方を開いて探す。灯……灯す……共倒れ……
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