放課後の図書室

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「はい、みんな今日もおはようさん。チャイム鳴るから席に着いてー」  30歳の体育教師が教室に入ってきた。肌は全身黒く、夏も冬も半袖のポロシャツにジャージのズボンを履いている担任の福部(ふくべ)だ。角刈り頭で電柱並みに背が高く、いかにも体育会系の風貌をしている。肌が黒いので笑った時に見える歯がやたら白く見えた。 「はーい、ホームルームはじめまーす。えー今日は欠席者は無し! 2年2組は出席率が高くて先生嬉しいぞ!」  よかったねーセンセー、とか、昼ご飯奢ってー、とか、生徒たちが先生に対して親しげに野次を飛ばす。今まで気にしたことがなかったけれど、このクラスはいつもこうなのか? アットホームというか、和やかというか。  そこでふと気付いた。生徒と距離の近い担任なら知っているかもしれない。  10分のホームルームで、登下校時の交通安全の話をして「じゃあ2時間目の体育でまた会おう!」と手を挙げて教室から出て行った。担任が居なくなった教室がざわつき始めてから慌てて後を追う。 「福部先生!」 「ん? おお、達川か。どうした?」  担任ともあまり話したことないので、僕の名前を知っていることに少し驚いた。まぁ名前を覚えるのも仕事の内か。
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