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放課後。今日も図書室のカウンターで数学の課題をやっていた。やっぱり静かな図書室は僕にとってオアシスだ。
少し難しい問題を解き終え、答えにアンダーラインを引いてその右端に斜線2本を引いた時、不意に肩を叩かれた。朝福部先生に叩かれた時より少し強めで、僕は何の疑いもなく振り向いた訳だが。
「おお、普通に引っかかった」
座っている僕に対して後ろに立っていたのは名前の分からない彼女で、振り向いた僕の頬には何かが刺さっている。目だけで確認すると、どうやら彼女の指らしい。僕は彼女に質問した。
「これは何?」
「ん? あたしの指だけど」
「そうじゃなくて、この行為は何?」
「この行為……? 人差し指を伸ばして肩叩いて、振り向いたらほっぺたに刺さるドッキリ?」
「……そう」
意味がよく分からなかったけれど、僕は分かった風に頷いて顔を前に戻した。1日に2回も肩を叩かれて、しかもその意味合いが全然違うということを今日初めて知った。人と関わることは嫌いだが、色々勉強にもなるらしい。あまり知りたくない知識ではあるが。
「で、名前は分かった?」
いつものように彼女は僕の隣に座った。平和から一転、地獄に似た時間の始まりである。
「担任に聞いたけど知らないって言われた」
「お、聞いたんだ? いいねぇ。次は誰に聞くの?」
次? そこまで考えてなかった。福部先生は佐々木先生に聞けばと言ったが、僕は佐々木先生を知らない。
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