10人が本棚に入れています
本棚に追加
誰に聞こうかと考えて、数学の先生と古文の先生と英語の先生と……と指折り数えていたら「クラスの人には聞かないの?」と言われた。
「聞こうかとクラスの人を観察したんだけど、誰も名前が分からなかったんだ。この人は誰でクラスではこのポジションについてる、とか分からなくて……」
知っていたところで聞こうとは思わないだろうけど。それは口にしなかった。
「そうかぁ……あ、クラス委員は? いるでしょ、委員長」
「クラス委員長……」
今朝見た面々を思い出す。その中に確かたまに教壇に立って色々取りまとめる役割をしている人がいたような……
「達川君は本当に人に興味ないんだね。昔からそうなの?」
大きな瞳で僕を覗き込む彼女に、少し怯んだ。純粋な好奇心の色合いを持ちながら、その奥には真意を探るような追求心が見えて思わず目を逸らす。
「まぁ、そう、だね。人に興味がないというより、あまり人と関わらないようにしてるんだ」
「なんで?」
「なんでって……」
一瞬、彼女になら話してもいいのではないかと考えてしまって、自分で自分を殴りたくなった。知り合ってまだ4日目だというのに、思考回路がどうかしている。
きっと彼女が初めからパーソナルスペースにずかずかと踏み込んできたので、気を許してもいいと脳が錯覚したに違いない。僕の馬鹿。勘違いするな。大丈夫、僕はもう二度と間違えたりしない。
「昔から人間が嫌いなんだ」
僕はなるべく、感情を殺して、何でもないように言った。彼女は眉を上げて驚いた顔をする。
「達川君も人間なのに?」
最初のコメントを投稿しよう!