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そう言われて、僕は叫びたい気持ちに襲われた。そうだ、僕は人間で相手も人間だった。感情のある人間同士で、対等だった関係で、そのことに甘えて、僕は相手を傷付けた。もう二度と過ちを犯さないようにと、贖罪のつもりで人との関わりを絶ってきた。
僕は、人間の他人が嫌いなんじゃなくて、人間の自分が嫌いなのだ。
どうしてそのことを知り合って間もない、名前も知らない異性に悟られなくちゃいけないんだ。脳が『こいつは危ない』と警鐘を鳴らした。
──早く排除した方がいいんじゃね?
昨日のお昼に野中君が言っていた言葉を思い出す。
野中君の言う通り、彼女に関わるとロクなことにならない気がする。手遅れになる前に手を打っておかないと。
僕は冷ややかな目で彼女を見た。
「君は、人を殺したことがある?」
「え、殺人? あるわけないよ。それがどうし……」
「僕はあるんだ」
「え?」
淡々と言え。二度と近付かれないように恐怖を植え付けろ。君の名前なんて心底どうでもいい。僕の前から居なくなれ。
「僕は人を殺したことがある」
「…………」
彼女は目を見開いて瞳を揺らした。僕は目を逸らさない。
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