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「えー、応援団とチアは各クラスより男女5人ずつです。立候補する人ー」
はいはいはーい! と男子が10人ほど手を挙げた。そのままじゃんけん大会になる。クラスの人たちはノリがいい人が多いらしく、クラス対抗リレーや障害物競走などの競技に出る人たちが次々と決まっていった。全員1つは出ないといけないらしく、僕は綱引きに立候補した。去年も綱引きで、少々サボってもバレないのだ。
というか、そもそもみんな僕が誰だか知らないんじゃないだろうか。誰とも話さず、なるべく存在を薄くしているので、僕がクラスメイトの名前を知らないようにみんなも僕の名前を知らない気がする。僕的にはそれでよかった。高校は卒業さえできればいいのだ。
「これでみんなどれかの競技には出るようになってる? 抜けてる人いない?」
「大丈夫だと思いまーす」
「応援団にクラス対抗リレーに部活対抗リレーだけじゃ足りねぇ! 全競技出られねぇの?」
「1人体育祭でもやっとけよ」
ぎゃははと騒がしいロングホームルームは委員長の仕切りで終わった。滞りなくクラス全体をまとめられる人ってすごいな。まぁ2組の人は積極的な人たちが多いからそのおかげな気もするけど。
チャイムが鳴ってそのまま解散となったのでカバンを持って廊下に出ると、誰かに「達川君!」と呼ばれた。
「帰るところごめん。ちょっといい?」
僕を呼んだのはさっきまでクラスを仕切っていたクラス委員長だった。クラスメイトに話しかけられるなんて思ってもいなくて、必要以上に驚いてしまった。
「な、なに?」
「達川君の下の名前、教えてくれる?」
話しかけられ、名前を聞かれた。僕は2度驚いた。何が目的でフルネームを知りたがるのだろう。しかもわざわざ呼び止めてまで。
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