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僕は、身体が震えていた。
自分が自分でなくなったようで、ただ怖かった。押さえていた感情が一気に溢れ出し、自分の意思とは関係なく大声を出していた。
「君に僕の何が分かるっていうんだよ! 知ったような口聞くなよ! 頼むからもう二度と僕の前に現れないでくれ! 目障りなんだよ!」
泣きながら叫んだ言葉は自分の耳を通して入ってきた。そしてハッとする。
僕は今、何を言った? 我を忘れて何を口走った?
「…………」
僕が突き飛ばした女の子は、目の前で大きく瞳を揺らして僕を見ていたが、取り繕うようにニコッと笑った。
「ごめんね」
彼女はそのまま、僕に背を向けて去っていった。
僕はまた、間違えてしまった。もう二度と突き放さないと誓ったのに、そのために感情を失くしてきたのに、彼女に触れられて動揺して、感情のままに突き飛ばした。
僕が、傷付けた。
目からは止めどなく涙が零れている。止め方も、止めるべきかも分からない。
もう、何も分からない。
僕は長い間、立ち尽くしていた。
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