【2】出逢い

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【2】出逢い

小学生低学年の頃。 痩せた雌の三毛猫が迷い込んで来ました。 食べ物をあげると、近寄って来て食べ始めた。 よほどお腹が空いていたのでしょう。 全く警戒もせずに。 それが私と猫の始まりでした。 名前はミーコ。 野良猫を寄せ付けない程、強い猫でした。 雌猫の問題は妊娠。 今は避妊手術が、当たり前に行われます。 でも、当時は違いました。 最初に子供を産んだ時。 1匹だけ残して、他は祖父が処分しました。 フィリピンの、壮絶な戦場から生還した祖父。 それでも、嫌な役だったと思います。 (あさ)の袋に入れ、裏山へ行く。 一度だけついて行きました。 袋を振り上げ、何回か岩に打ち付ける祖父。 悲しみより…怖かった。 でも、知っておくべきことだと思いました。 雌猫を飼うということの現実。 無言で土に埋め、手は合わせない。 手を合わすと情がついてくる。 そう教わりました。 居なくなった我が子を、鳴いて捜すミーコ。 ごめんね、と言うしかありませんでした。 残せない時は、皆んな処分しました。 無責任に捨てて、逃げる人もいます。 その後の子猫達の苦しみは? 勝手な運任せでいいの? 逃げずに、その責任を負う祖父。 尊敬すべき行動だったと思います。 いつしか、ミーコもそれをを受け入れました。 空の箱を見ても捜さず、異常に甘えるミーコ。 人の世界なら、恨むべき相手に。 飼われている自覚と、母猫の立派な覚悟。 猫と生きると言うことは、そういうこと。 それから10年以上生きたミーコ。 片目は白内障を患い、ある日姿を消しました。 (かしこ)い猫は、飼い主に死に様を見せない。 母から、私はそう教わりました。 中には、居なくなって捜すと、当時あった牛小屋の隅で、冷たくなっていた猫もいました。 遠くまで行く力がなかったのでしょう。
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