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で。
そんな俺様の初恋は、唐突に終わりを迎えたわけだ。
理由は簡単。あの白い家がなくなっちまったからだな。ある時でっかいブルドーザーみたいなのが来て、家をぶっこわしちまいやがった。
家族は引っ越してしまったんだろうなって思ったよ。もう二度とあの白猫には会えない、名前も聞けなかったとすげえ残念に思ったもんさ。
な。これだけ聞くと、気味の悪い話ってかんじで終わるだろ?
残念無念、続きがあるんだよ。
家がなくなってからも、俺は残念に思って一家の行方を探してたんだ。そしたらパトロール中に、あの家について詳しい地域猫に遭遇してさ。で、教えてくれたんだよ。
『あのボロボロに家か?随分長いこと、人が住んでなかったみたいだしなあ。しかも、最後に住んでた一家ってみんな不審死してるみたいだし……』
俺には、あの家がピカピカの綺麗な家に見えてたんだぜ?
普通に猫がいて、人が住んでるように見えてたんだぜ?
地域猫のそいつによれば、その家族は野良猫を捕まえて料理にして食うってことを日常的にやってたらしい。猫が嫌いだったんだとよ。で、海外では猫を捌いて焼いて食う文化があるらしくってな、どうせ殺すなら喰っちまおうってことにしてたんだと。
そしたら、最後は……家族全員、バラバラ死体で見つかるっていう謎の末路。
露骨な事故物件になっちまって、家ごと放置されてたのを。倒壊の危険ありってことで、ようやく親族から取り壊す許可が貰えたってことらしい。びっくりだよなあ。
ほら、お前も流石に怖くなってきただろ?
だって二階のこの部屋、お前の部屋だもんな。住人どもの悲鳴なんかお前、いっぺんも聞いたことなかったろ?前の家に住む猫の姿も、俺がなんで窓際にいるのかも知らなかったんだろ?
猫を殺しまくって、祟られたんだろうなあ。あの白猫が呪いの根源だったのか、それは今でもわからない。
まあ、猫に呪われて死んでも家の中に閉じ込められ続けてたんじゃ、俺様の姿を見てびびるのも無理はないだろうな。
ん?
もう家は壊したんだから、猫の幽霊も人の幽霊もいなくなったよなって?だから安心だよなって?
お前はめでたいなあ、カイヌシ。
一家まとめて、存在しない家に閉じ込めるくらいの力を持った猫どもが。家がなくなったくらいで、恨みを忘れたりするもんかよ。
家がなくなったせいで、俺には前よりもはっきり見えてるんだぜ。
更地になった、あの空地。
中心ではずっと、ずっと、ずーっと――猫どもが、人間のバラバラ死体をがつがつ食い続けてるよ。
カイヌシも、家の前を通る時は一応気をつけな。
時々白い猫が、歯をむき出しにして威嚇してるからよ。
万が一空き地に入ったら、多分その時は。
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