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寝室はどこ?
奥の、そのまた奥
誘惑するのが得意だ、そう思ったのが数分前。私はマーサ・レイニーが眠る寝室に仰向けになっていた。カーテンの隙間から青白い月の光が束になって私を貫く。
ちゅぅっ、っと唇を食すマーサがゆっくりと私の服を脱がしていく。私に馬乗りになるマーサが妖艶に笑うから下半身が大きく反り返る。
「なぁ、今更なんだが、男の身体に欲情できるのか?」
「んー、大丈夫じゃない? だってホラ」
ぐりっと押し付けられたマーサのペニスは私と同じように勃起していて途端に背中に電流が走る。──ワイアットも俺に欲情してるね。嬉しい、と付け加えたマーサが私の身体を丹念に舐め上げていく。脱がせたシャツを放り投げ鎖骨、胸、腹、下腹部にキスを降らせていく。偶にちろちろと舌で愛撫するのだから身体が反応する。ぴくん、こんなに跳ね上がる身体を見たのは自分でもはじめてだった。
「逆に男に欲情しちゃうことに困惑はしないの? 自分のセクシャリティに驚かないよねワイアットって」
「……そういえばたしかに」
シーツを被って私の下半身のところに蹲っているマーサはこちらを見てあざとく首を傾げた。確かに誰かを愛することに苦手意識を持っていたが、それは性別で判断することのようなものではなかった。男が好きというよりは
「好きになったのがマーサだからじゃないか?」
「……ちょっとときめいたのは言わないことにするよ」
「悪い子だ」
私はマーサの後頭部を撫でる。悔しそうに顔を歪める彼は私のバックルをしなやかな指で抜いていく。ジーンズの中で苦しんでいた私のペニスがようやく外気に触れる。は…っと小さく吐息が漏れた。ジーンズが床に落ちる激しい音が聞こえた瞬間に、私のペニスがマーサの指に包まれる。マーサの指のシワと私のペニスの筋が重なった。陰茎を長い指がきゅっと握りしめる。
「……っ、ぁ」
「聞きたかったそういう声」
ふふ、っと悪戯っ子のように笑うマーサはゆっくりと一定のリズムで擦り上げる。手を動かしながら偶に私の太ももにキスをするから、私はそれにも耐えなければならなかった。亀頭を手のひらできゅっと絞られるとたまらず声が上がった。悲鳴にも似た声だ。
「……今まで擬似セックスしかしなかったでしょ? あれはしかも乱暴だったし」
「、っあぁ……」
「だから今日は優しくしてあげたい。っても、もし乱暴にされるのが好きならそうしてあげるけど」
そう言ってまた亀頭を大胆に指で弄くり回すのだから私はシーツの中で悶えるしかなかった。息が上がる。こんなに手でするのが上手い女はいたか? たまらず私は溜め息をつく。
遊びと本気は違うと誰が言っていたがそれが理解出来て、私は窓を見つめる。月がこちらを覗いていた。私の溜め息が気に入らなかったのか、キスを降らしながらマーサが戻ってくる。太もも、腹の上、肋骨、胸、鎖骨、首筋、そうやって私の身体を這い上がってきたマーサは心配そうにこちらを見ている。
「やっぱりやめる?」
「……君を美しいと最近までは思っていたけど、どうやら可愛い子のようだ」
「大丈夫そうだね」
ははっと笑ったマーサはシーツを被り、私の下半身の方に戻っていく。そしてペニスを咥えた。
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