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「ワイアットの中に入れて」  出逢った時に言われた言葉を再度言われる。私の心にすんなり入り込んでもうどれくらい経つだろうか。 「ん、いいよ」 「ありがとう」  素早くコンドームをつけて、マーサの頭にクッションを置いた。──ゴムつけるの慣れてるの笑える。なんてマーサが言うから自分がどれだけの女と夜を共にしてきたのかを思い出す。思い出して、マーサを仰向けに寝かせていることに驚いた。私はバックが好きだったはず。顔を見なくていいから。征服欲を煽るから。変わってしまった自分にふ、っと笑えて変えた張本人であるマーサの唇にキスをする。そしてゆっくりと自身のものをマーサの中に沈めていく。ゆっくりゆっくり、傷つけないように。 「ふぅ、ぁ……」 「全部入り…切る、かァ?」 「入れ、て」    どうにも全部収めたいマーサは私の腰に足を絡めた。おかげでより密着した身体。ぐっ、とマーサの力で中に押し込まれた私。そんな私の耳元で艶やかな吐息が囁かれる。 「……っあ、はら、いっぱい、んぁ」 「入ったよ。……お疲れ様」  全部を飲み込んだマーサの額にキスを落とし、汗が滲んだ首筋を拭う。大粒の汗がながれていく。  マーサの指が何かを探すようにシーツを這う。 「どうした?」 「…、てぇ、繋いで、て……」  この子は私を殴り殺す気なのだろうか。  私の手を攫い指と指が交差した。重なる、重なって蕩ける。蕩けて同じ温度になって、その後はどうなるのだろうか? 愛のあるセックスがどう終わるのか私は知らない。教えてくれ、マーサ。 「あまり煽らないでくれ」 「……煽らない戦いは面白くない」  ふ、っと笑ったマーサ。どこか余裕のあるマーサ。可愛らしいマーサ。煽られて少しだけ余裕のない私。ゆっくりと律動をはじめる。マーサの頭の上に繋がれた手がある。ぎゅっと私の手を握りしめるマーサの手。  マーサの中に入っているというのにまだ奥に入りたいらしい私はより腰を押し付け奥へと突き進む。丹念に解したおかげでそこは柔らかくて温かい。 「痛くないかい?」 「…ぅん、は…あぁ、痛くな…い。気持ちいい…」 「そうかい、それはよかった」  キスをして、絹のように柔らかく肌触りの良い言葉が私の耳に落とされた。ぶるり、身を捩ってしまう。ふふっと笑うマーサは確信犯だろう。…はぁ、っと荒い息を携えて私はマーサの唇を激しく攫う。チクチクすると髭を笑っていたマーサ。その口元でマーサを食す。舌が外気に当たるがすぐにマーサの舌と絡まり、唾液と唾液が混ざり合う。  その間も腰をゆったりと打ち付ける。肌と肌が擦れる音が聞こえる。衣擦れの音が静寂な夜にひっそりと這う。 「好き、ワイアット」 「……頼むから煽るな」 「好きだよ」  マーサは戦い方を熟知しているようだ。
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