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 愛する者がいる世界は美しい。マーサの身体を月の光が暴き出し舐め回すからそれにさえも嫉妬している。エゴイズムで醜く愛おしい気持ち。脳髄が収縮し心臓が圧迫される。恋は肉体戦だ。愛は戦いだ。  私の欲望を搾り取ろうと必死に中がうねる。マーサの身体の上にぽたり、私の汗の雫が落ちる。ぽたり、ぽたり。私を抱き締めるマーサの身体も湿っている。同じ湿度を保ち、同じく互いを求め合う。苦しく愛おしい表情で互いを抱き締める。何ミリにも満たない距離。  背中に回るマーサの手が熱くて仕方がない。背中はヒリヒリと痛みを感じている。彼がつけた引っ掻き傷は数日残るだろうか。その引っ掻き傷をまた彼が裂けば擬似セックスすることがだろうか。セックスしているのに次を考える。随分と自分が欲しがりになり笑えてしまった。  背中に回っていた手を引き剥がし、ゆっくりと自分の手を重ねた。指と指、シワとシワを重ね合わせ、互いの指が交互に絡み合うようにする。私の律動に合わせ、マーサの爪が私の手の甲に突き刺さる。 「マーサ…」  うわ言のようにマーサの名前を呼び、彼の中を泡立て擦り上げる。先ほどからこりっとした部分、前立腺を避けてきた。良い場所に当たるように自ら腰を動かす可愛らしいマーサを見ているのが幸せだったからだ。先程から私の判断基準は可愛いと愛おしいのどちらかだ。   「欲しい…?」  一回だけ前立腺の場所を行き来すると、マーサは腰を震わせた。中がぎちぎちと締まる。ふぅ、ふぅと息をするマーサはこくんと小刻みに頷いた。熱い吐息混じりに──欲しい。と言葉になるかならないかの乱れ具合で囁いた。この言葉は私だけが知っている。今まで誰に抱かれてきても今のマーサのこの言葉は私だけ。私だけのもの。  ぐり、っとそこを押し潰す。ひゃぁ、っと背中を仰け反らせるマーサ。そこを無我夢中で擦り上げた。ばちゅん、卑猥な音がシーツに埋もれていく。肌と肌が激しく当たる音。 「イッ、ちゃ! 激し…ぁ!…んぁ!」 「い、いよ。イキな……」  緩急の急、激しく引いて押し込む。それをひたすらに繰り返した。マーサの身体も声もぐずぐずになって私を翻弄する。もう私も余裕がない。がつんがつん、腰を引いては押す。 「まっ、て、…ちょ!ぁん、ま、って!!」  その言葉に我を忘れていた感覚が引き戻される。ゆっくりと律動をやめていく。 「どうした? ……痛かったかい?」 「違う。一緒にイキたい」  私を射抜く妖艶な瞳。唾液でぐちゃぐちゃの口に私は激しく自身の唇を押し付ける。マーサの口内は甘くて仕方がなかった。マーサの願いが私のカケラほどにしか残っていなかった余裕を潰す。マーサの一撃はいつも重く痛い。  私は中に入っているものを激しく引き抜き、押し込む。パン、っと何かが弾けるような音がした。それが私が突き上げた時に肌が当たった音だと知ったのは、マーサのペニスから白濁液がびゅくりと弾けた時だった。 「そう、言いながら……先にイッたな?」 「!だ、って、!!」 「よく締まる穴だ」  私はマーサの頭を撫でる。その間も激しく腰を動かすのをやめない。パンパンと肌が重なる音が響き渡る。ぐちゅりという卑猥な水音とマーサの甲高い嬌声も同様だ。シーツの中は湿度が高い。私に怒られたからか、マーサは私の肩に歯を合わせた。イカないようにしっかりと歯を私の肩に食い込ませる。 「マーサ、私も、もうげん、かいだ」  マーサの最奥にズンっと押し込む。マーサの中は私を飲み込もうとうねる。ひたすらにその繰り返し。 「…かむ、のやめな。声を聞かせておくれ」  マーサは私の言葉に従順に従い、歯を離す。その瞬間に悲鳴にもならない言葉にもならない淫らな嬌声が響き渡る。ワイアットと吐息の間から名前を呼ばれる。その声が起爆剤だ。  私の背中と腰がぶるりと震える。 「マーさぁ゛…っ」  マーサをキツく抱き締め、欲望がマーサの中に吐き出される。びゅくりと白濁したものがゴムを隔ててマーサの最奥に注がれた。 「愛してる、…よ」  荒い息を整え、汗を手の甲で拭い、マーサの身体にキスをして、愛を捧げた。全身で愛を捧げた。
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