18話

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18話

旅行に行くのであれば今の内に、という産婦人科の先生の言葉で、新婚旅行を兼ねた旅行に行くことになった。旅行といっても、遠距離の旅先に行くのは冬也さんも私も躊躇して、近場の温泉への1泊2日。 「陽菜、忘れ物無いか?」 「はい」 「じゃあ、車出すぞ」 高速で1時間ぐらいの場所にある、妊婦でも入れる温泉があるその宿は、お部屋に露天風呂が付いているから、誰にも見られず気兼ねなく入れるのが決め手だった。 「部屋付きの露天風呂楽しみですね」 「そうだな。誰にも陽菜の体を見られなくて済むから安心だ」 羞恥心で言ってる私とは違う意味合いなのが分かるから、思わず顔が弛んでニヤケてきてしまう。 「まあ、俺は見るんだが」 「ふふっ……冬也さんにも見せません」 「何でだよ。俺は旦那だからいいだろ」 「だって恥ずかしいですもん」 「陽菜は俺のだろ。俺だけは見る権利がある」 ちょっと不服そうな冬也さんの横顔を盗み見ながらクスクス笑っていると、高速前の最後の信号に引っ掛かり車が停まった。少しの間を置いて冬也さんから不意打ちでキスをされ、思わず周りを確認する。同じように横に停まっている車があるから見られてないか気になったけど、どうやら大丈夫だったみたい。 「ちゃんと見られてないのを確認してやってるから安心しろ」 「もう。全然安心出来ませんよ、そんなの」 「そう言うな。したかったんだからしょうがないだろ」 ちょっと笑いながら頭を撫でて、再び車を走らせ始める。 予定していた時刻に旅館に着き、チェックインして案内された部屋。それが、想像していた以上に広くてビックリしてしまった。 「広ーい」 「和室だから、ゴロゴロしたくなるな」 本当にそう。和室って何でこんなにゴロンってしたくなるんだろう。 「時間になりましたら、夕食をお部屋までお持ちいたしますので、それまでごゆっくりお寛ぎ下さい」 案内をしてくれた仲居さんが丁寧に挨拶をして出て行った後、2人で早速露天風呂を見に行く。 「大人2人は余裕で入れそうだな」 「一緒に入る気満々ですね」 「当たり前だろ。何のための部屋付き露天風呂だ」 別に一緒に入るためだけでは無いと思うんだけど。まあ、私も一緒に入るのが絶対嫌なわけではないし、恥ずかしいけど新婚旅行だもんね。思い出にはなる……かな?
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