2話

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2話

「んー……」 微かに陽の光を感じて、瞼を閉じたまま重い体を何とか動かして寝返りをうつ。時間を確認しようと近くに置いてあるはずのスマホに手を伸ばす。でも、触れたのが器械ではなく人肌の様な気がして、重く閉じられていた瞼をゆっくりと開いた。 「んー……? ……え……?!」 薄く開けた先に顔のようなものがぼんやりと見えて、目を擦ってしっかり見ると、目の前で寝ているのは紛れもなく山上課長だった。 「何で、課長が……?!」 しかも、何で抱きしめられて寝てるの……!?そういえば、さっき寝返り打つときに妙に動きにくいとは思ったけど…… 何が起きてるのか理解できなくて、無意味に課長の寝顔と天井を行ったり来たりしていると、ふと自分の体に違和感を感じた。 「まさか……」 掛けていた布団を捲った先に見えた自分の体は、まさかの全裸。服どころか、下着すら身に着けていない生まれたままの状態に愕然とする。 「も……もしかして……?」 そろりと更に捲った布団の先――まだ寝ている課長の隠れていた部分も裸な事を確認して、呆然となった。 私……まさか課長と……?そういえば、昨日居酒屋からの記憶が無い。どうやってホテルに戻ったのかすら覚えてない。でも、自分がかなり早い段階で酔ってたのと、課長に沢山飲ませちゃった記憶だけはある。 どう考えてもこれって、酔った勢いで課長とって事だよね……何やってんの私……ワンナイトラブなんて、人生で1度も経験したことないのに……!しかも相手は社内の人間で、よりにもよって山上課長だなんて……! 「――こんな事してる場合じゃない」 よく見たら、この部屋は私の部屋じゃない。つまり課長の部屋って事だ。寝ている間に自分の部屋に戻って何食わぬ顔をしていれば、無かったことに出来るかもしれない。課長だって酔ってただろうから覚えてないはず。 「そうと決まれば……!」 課長を起こさないように何とかベッドから抜け出して、そこら中に散らばっている衣服の中から、自分の下着と服を探し出す。あまりにも乱雑に床に落ちている服が、昨夜の私達がいかに理性を無くしていたかを物語っているみたいで、恥ずかしくなった。 「ん……」 ベッドから課長の声が聞こえて、緊張で思わず動きが止まる。お願い、まだ起きないで……! 「んー……朝か……」 願いも虚しく、上半身を起こした課長と、まだ下着しか身に着けていない私の視線が交わった。まだボーっとした表情には、会社での課長は想像出来ないぐらいあどけなさがある。 「ん……?」 「あのっ、これはですね……!」 「あー……いや、説明はいい。――とりあえず、服を着てから話をしようか」 「……はい」 何でこんな時までこんなに冷静でいられるんだろう。普通自分の部屋で女性が、しかも部下が下着姿でいたら、もっと慌てるもんなんじゃないの?もしかして課長、こういうのに慣れてるとか……?
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